『未来の成功のために』
2026.04.15
早稲田アカデミーへの入塾をお考えになっている方から、「小学校受験で失敗させてしまったので、怖くて中学受験への一歩が踏み出せない」というご相談をいただいたことがあります。
子どもに「失敗をさせたくない」「辛い思いをさせたくない」という想いは、親であれば誰しもが持っているものでしょう。その一方で、子どもの「将来の成功」を願わない親もいないはずです。中学受験を、お子様の「将来の成功」のための選択肢として検討されているのであれば、積極的に一歩を踏み出していただきたいと思うのです。
もちろん、受験である以上、そこには合格する方がいる一方で、残念な結果に終わる方もいます。不合格になることを「失敗」と考えると、「失敗が怖い」という気持ちになるのもわからなくはないのですが、不合格という結果は本当に失敗なのでしょうか。私は中学受験の成功は必ずしも合格することではなく、不合格という結果も失敗とは呼べないと考えています。
毎年、新年度がスタートするタイミングで、小6受験生に対して「受験の成功・失敗」という話をします。そのなかで「合格することが成功なのだとしたら、隣の生徒の答案が見えて、それを写して合格しても成功なのか」という問いかけをします。もちろん「それは成功ではない」「よくないことだ」という答えが返ってくるわけなのですが、「なぜ成功ではないのか」「なぜよくないことなのか」も考えさせるようにしています。最終的には「自分の力で合格しなければ、入学してもついていくことができないから」という答えに行き着くことになります。中学受験では、その中学校に入学するのにふさわしい力を持っているかどうかを試すために入学試験がある。そのための力を蓄えることができれば、それが成功……と生徒たちには話をします。
私は、中学受験に向けた学習を進めていく過程で身につくものが、大きく二つあると考えています。一つは「大きな目標に向かって真剣に取り組む経験」であり、もう一つは「深く考え、判断していく力」です。もちろんその土台として、幅広い知識も身につくでしょうし、素早く正確に処理をしていく力も身につくでしょう。そして、それらの経験や力は、お子様が将来、より豊かな人生を歩むうえで欠かせないものになると思います。そう考えた場合、「中学受験に失敗はない」というのが、私の結論なのです。
お子様にも、「失敗したくない」という気持ちはあるでしょう。子どもの場合、将来の入試での失敗というよりも、普段の学習やテストで失敗したくない、という気持ちが強いと思います。宿題が終わったところでお母様がマルつけをして、バツがつくととたんに機嫌が悪くなる……というご相談をいただいたことがあります。バツがたくさんつくと、勉強に対するやる気もなくなって宿題を途中で放り出したり、塾にも行きたくないと言い始めたりする、ということもあるようです。
小学校低学年から中学年のお子様は、もともと「ほめられたい」という気持ちが強いはずですから、宿題などは「完璧」を目指して取り組みます。また、まだ幼い分、(よい意味での)妥協ということもできないはずです。さらに、中学受験を目指して塾に通い始めたお子様ならば、学校では標準以上の成績の方が多いはずですので、「宿題ができない」「たくさんバツをつけられた」というような経験もしたことがないでしょう。そう考えると、お子様にとって「できなかった問題がたくさんあった」という事実は、大人が想像する以上にショックなもののはずです。感情のコントロールが十分にできず、まだ「甘え」も残る年齢のお子様が、「宿題ができないことでかんしゃくを起こす」というのは、ある意味当たり前のことなのです。
では、そのようなときに親はどうすればよいのでしょうか。難しい問題を解かせてできないと機嫌が悪くなるのですから、簡単な問題だけを解かせるようにすればよいのでしょうか。中学受験を目指すという視点で考えれば、それでは目標に届かないのはおわかりいただけると思います。また、受験に限らずとも「できる問題」だけを与えていくのは、お子様の成長にとって好ましくないのもご理解いただけると思います。
お子様が失敗しないよう、親が「手取り足取り」リードをして導く、という方法もあります。「問題を解く」ということで考えれば、わからない問題の「解き方を教える」ということになります。教えるということ自体が悪いわけではないのですが、一からすべてを教えてしまうと、結果お子様は自分で考えることをせずに、「わかったつもり」になってしまうことにもなりかねません。自分で考えて失敗することで、次には同じ失敗を繰り返さないようになっていくのは、「学習」ということの本質の一つだと私はとらえています。
高校・大学と学習のレベルが上がっていき、さらに社会で活躍するようになると、ぶつかる問題や課題のなかには「正解」が用意されていないものも増えていきます。そういった問題には、正解まで導いてくれる存在はいませんし、1回で「正解」まで行き着けるとも限りません。たくさんの失敗を繰り返しながら、多くの試行錯誤を積み重ねて、大きな問題を乗り越えていく……。そのための土台をつくるためにも、小学生のうちから「難しい問題」にも自ら挑戦する経験を積んでいただきたいと考えています。
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