『テレビが言ってた……』
2026.04.08
(母)「今日、傘を持って行った方がいいかしら……」 (子)「今晩は雨だって、テレビが言ってたよ!」
日常的な会話のひとコマだと思います。ただ、ちょっと考えてみると、いろいろと面白いところがあると思うのです。
「テレビが言っていた」という表現について、皆様はどのようにお感じになられますか。上記のような会話をしているときに、「ちょっと、今の日本語はおかしいわよ。テレビ『が』じゃなくて、テレビ『で』が正しいんじゃない」と指摘するお母様は多くないでしょう。私もそれに賛成です。確かに、「テレビ『が』言っていた」という表現は、日本語の文法としては正確ではないかもしれませんが、表現としては面白いと思います。厳密な意味の「擬人法」というよりも、「その情報はテレビから得たものだ」ということを表している、ちょっと「気の利いた」表現のように思うのです。「テレビ『で』言っていた」という表現になると、番組に出ているアナウンサーや気象予報士が話しているイメージになりますので、正確ではあるかもしれませんが、「表現としての面白み」には欠けるように思います。
また、同じようなシチュエーションで子どもが「テレビ『で』言っていたよ」と言ったときに、「誰が?」と聞き返す方もいらっしゃらないでしょう。多分、誰でも自然とニュースやワイドショーのなかの「お天気コーナー」をイメージし、気象予報士やアナウンサーの姿を思い浮かべるのではないでしょうか。
「テレビ『で』言っていたよ」という表現では、「誰が」という主語が「省略」されています。日本語は省略が多い言語といわれることがあります。「聞き手」がその部分を補ってくれると思われるところは、省略されることが多いのです。特に日常会話においては、主語が省略される場合もありますし、述語や目的語が省略される場合もよくあります。
上記の会話では、子どもの発言の前半部分にも省略があるのにお気付きでしょうか。「今晩は雨だって」のところです。この部分の主語は何かと問われた場合、「今晩は」と考えるお子様もいることでしょう。しかし、実は違います。この部分では主語が省略されているのです。主語を補って書き直すと、「今晩の天気は雨だって」という表現になります。
少し気になって、翻訳アプリに、以下の二つの表現を入力してみました。 「今晩は雨だって、テレビが言ってた」 「今晩は雨だって、テレビで言ってた」 すると、どちらを入れても同じ英文に翻訳されました。 「The TV said it’s going to rain tonight.」 次に「今晩の天気は雨だって、テレビで気象予報士が言ってた」も入力してみました。 「The weather forecaster on TV said it’s going to rain tonight.」 一つ目の英文は、英語構文的には「無生物主語」と呼ばれるものです。「雨が降るという情報はテレビから得たものだ」というニュアンスに近いでしょう。一方で後者の表現は、より具体的にテレビの映像がイメージされると思います。
ちなみに、「今晩は雨だって」「今晩の天気は雨だって」という表現については、どちらを入力しても同じ表現に翻訳されました。ひと昔前と比較をして、「翻訳アプリ」も大きく進化しているのだな、と思ったりしています。
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