『端午の節句』
2026.05.08
ゴールデンウィークが終わりました。皆様はいかがお過ごしでしたでしょうか。私は例年のように、この時期は入試問題の研究をしていたのですが、プライベートでもいろいろ片付けなければならないことがあり、バタバタ過ごしていた感じです。
「今年は物価高・円安や世界情勢の影響もあり、近場で過ごす人が多い」とニュースで報じられていましたが、私もその通りの過ごし方でした。外出は近場の公園に犬の散歩に行ったぐらいです。その公園には「こいのぼり」が20匹ほど泳いでいました。大きめの池の上にロープが張られて、泳いでいたというよりも、そこに「つるされていた」というのが正しい表現でしょうか。昔は男の子がいる家庭ごとに飾られていた「こいのぼり」ですが、最近は住宅事情などもあるようで、首都圏では公園や商業施設のイベントなどで飾られることが多くなっているようです。東京タワーやスカイツリーでも例年連休中は「こいのぼりイベント」が行われているようです。
小学生のときには毎年、母の実家の庭に大きな「こいのぼり」が3匹飾られていました。母は一人娘でしたので、孫が生まれてから祖父母が用意したものだと思います。私が長男で下に二人弟がおりますので、3匹の「こいのぼり」が準備されたのでしょう。当時の祖父母の家は平屋でしたので、まさに「屋根より高いこいのぼり」という光景だったのを、なんとなく覚えています。
「さわやかな 初夏の訪れ こいのぼり」 小学生が、「ゴールデンウィークの思い出を俳句にしなさい」と先生に言われて書いたような句でしょうか。小学5年生がつくった句として考えれば、よい評価をあげてもよいように思います。しかし、この俳句には実は大きな問題があります。俳句には季語が必要です。この句の季語はなんでしょうか。パッと思いつくものとしては「初夏」「こいのぼり」という二つでしょう。学校では「一つの俳句には季語は一つ」と教わる場合もあるので、そこに違和感を持たれた方もいらっしゃるかもしれません。しかし、厳密に言うと、二つ以上の季語を使うこと自体はルール違反ではないのです。「季重なり」と呼ばれる句になるのですが、実は季語が二つある句はけっこう多くあります。ただ、三つの季語となると、十七音が季語だらけになってしまいますので、ほとんど存在しません。ところが、意外に有名な句で三つの「初夏」の季語が入っている句が存在します。 「目には青葉 山ほととぎす 初鰹」(山口素堂) ご存じの方もいらっしゃるでしょう。
さて、では先ほどの「こいのぼり」の句はどこが問題なのかというと、「初夏」「こいのぼり」以外に、この句の中にはもう一つ季語が入っているのです。それは、「さわやかな」という言葉です。そして、この「さわやか」「さわやかな」という言葉は、実は秋の季語なのです。もちろん、日常生活において春や初夏に「さわやか」という表現を使ってはいけないということではないのですが、別の言い方の方がふさわしいともいわれているようです。
日本の秋の「さわやかな気候」と聞いて思い浮かぶのは、次の俳句ではないでしょうか。 「柿くへば 鐘が鳴るなり 法隆寺」(正岡子規) 真っ赤な柿と青空のコントラスト、鐘の音の余韻、そんなところから「秋の澄んだ空気」を感じられる句だと思います。そこが日本人の感性にマッチして、非常に有名になったのではないかと思っています。
「俳句」や「短歌」は中学入試での出題頻度は高くありません。しかし、塾の国語教材には必ずといっていいほど含まれる単元です。早稲田アカデミーで使用している四谷大塚「予習シリーズ」カリキュラムでは小学5年生で出てきます。日本人の「感性」や「情感」、「季節感」などを教えていくのには適した単元だと思いますし、そこから「一つの言葉のイメージを膨らませる」という指導に進めていくこともできる分野だと思っています。もしよろしければ、ご家庭でも俳句についてちょっとお話しいただくのもよいのではないでしょうか。
菖蒲湯に入りながら、先ほどのこいのぼりの俳句を「初夏の季語」だけにするにはどうしたらよいか、考えてみました。 「すがすがしい 初夏の訪れ こいのぼり」 「すがすがしい」は初夏の季語になります。
- 2026.05.08 『端午の節句』


