四つ葉cafe 福田貴一 中学受験をお考えの小学生3・4年生のお子様をお持ちの保護者の方のためのブログ

『テキストに書かれていないこと』

2026.11.06

中学入試では「テキストに書かれていないこと」が出題されることも意外に多いものです。というと驚かれる方もいらっしゃるかもしれませんが、入試問題作成担当の先生は、進学塾のテキストなどを十分に研究していらっしゃる方が多いので、それらを参考に、なるべく目新しい問題をお考えになっているようです。もちろん、テキストに書かれていることが土台となっているのですが、特に理科や社会などでは、その周辺の知識や考え方についても、興味を持って習得しているかという点が問われることも多くなってきています。


国語の文章読解では、単に書かれていることを読み取るだけではなく、その文章の背景を理解することでより深い読解ができるようになります。物語文の出典は、一時期は現代の小学生が主人公のものが多かったようですが、最近では舞台となっている時代や地域、主人公の年齢もさまざまになってきています。こういった文章を授業で取り上げるときには、物語の背景にもある程度触れることが必要になります。国語に関しては特に難関校において、その傾向が強くなっているように個人的には思っています。以前、開成中で下村湖人の古い長編小説『次郎物語』が出題されたことがあります。私は小学生のときに読んだ記憶があるのですが、いまの子どもたちはどうなのでしょうか。そのときに「みんなの学校の図書館に『次郎物語』はあるかな?」と話したところ、何人かの生徒が調べてきて「置いてあった」と教えてくれたのですが、読んだことがある生徒はいませんでした。明治末期から大正にかけての少年を主人公にした教養小説ですので、現代とはいろいろなものが違います。時代背景だけではなく、登場人物の考え方なども現代とは大きく違っています。開成中の出題は、そういった点も理解して、根底にある登場人物の心情を把握するような問題でした。


一方で、周辺知識や背景について膨らませて授業をしても、なかなか集中してくれない生徒もいます。生徒が一番関心を持つのは「自分が解いた問題の答えが合っているかどうか」ですから、そちらに心が引かれてしまうわけです。算数でも自分の解いた方法や図が合っているかというところだけが気になって、違う解法や考え方を解説しても、なかなか吸収してくれないこともあります。そこをうまく聞かせていくのが、講師の「技」ということになるのでしょうか。


国語の授業では「脱線」することがよくあります。特に言葉について深く理解させたいときには、さまざまな例を使って話をします。例えば、流行している歌の歌詞であったり、名前の付け方であったり……。以前、NN女子学院クラスで名前についての話をしたときには、クラス全体の7割以上が名前の語尾が「ア段」か「イ段」でした。昔の日本の女性の名前は「エ段」「オ段」が多かったのですが、その語感の違いについて考えさせました。問題を解いてその解説を聞くのが「授業」だと思っていた生徒たちは、少し驚くと同時に、「言葉について考える」ということを学んでくれたようです。


極論すれば、テキストに書いてあること、模範解答や解説に書いてあることだけを教えるのであれば、講師の存在意義は薄いと考えています。もちろんテキストや解説は「難しく」書かれていますので、それをわかりやすく噛み砕いて伝えるのも、講師の役目です。しかし、そこから一歩踏み込んで、テキストに書かれていないこと(特に大きな考え方や思考の方向性など)を、しっかりと教えていくのも必要なことだと考えています。そういった意味で授業はとても大切なものです。ご家庭では、直接テキストに書かれていないことでも、先生の話をしっかりと聞くようにお伝えいただければと思います。

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