『魔法をかける。』
2026.05.29
「やる気を引き出す魔法」……そんなものが本当にあればいいな、と思います。もちろん、そんな魔法はありません。しかし、お子様のやる気を引き出すのがうまいお母様はいらっしゃるようです。「やる気を引き出す」というよりも、「うまく乗せる」というようなイメージを私はもっています。
小3のマンスリーテストのときの話です。テストにきたある生徒が次のように教えてくれました。 「今日は『青』だから、集中できるんだよ!」 確かに、素敵な青色のTシャツを着ていました。お母様が「今日は大切なテストだから、青いTシャツにしようか。集中できる色なのよ」と送り出してくれたそうです。その日のテストで、彼は自分の最高記録となる結果を出しました。それ以降も、テストのときはよく青い服を着ていたのを覚えています。
「全国統一小学生テスト」のときの話もご紹介します。 「今日はみずがめ座がNo.1! だから頑張る!」 そんなことを言っていた生徒がいました。おそらく、出掛ける前に見たテレビの「星占い」の話でしょう。ただ、きっとそれをお子様が見ただけではなく、隣でお母様かお父様が「よかったね! 今日はみずがめ座が一番だから、テストも頑張れるね」というようなお言葉を掛けられたのだと思います。もしかしたら、その生徒はテレビの「星占い」を見たのではなく、お母様から「さっきテレビでやっていたんだけどね」と教えられたのかもしれません。それは、お母様ご自身による「星占い」だったのかもしれませんが……。
子どもは、よい意味でも悪い意味でも「単純」です。計算テストでも漢字テストでも、ちょっとした盛り上げ方で気持ちが乗ってくるのです。
以前担当していた小3クラスに、ちょっとやんちゃなタイプの男の子がいました。暗記学習があまり得意ではなく、なかでも漢字テストが嫌いでした。そこで、お母様と相談するなかで一計を案じました。漢字テストを、授業後に個別に受けていただく方法を提案させていただいたのです。もちろん毎回ではなく、彼が「乗ってくる」までのひと月ほどのお約束で。
授業後、面談室で私は彼に次のように伝えました。 「さあ、漢字テストをやろう! 先生との『勝負』だ! 100点を取ったらほめてあげる!」 その日、彼は残念ながら負けてしまいました。しかし、翌週の授業後、彼はこう言ったのです。 「今日の『勝負』は絶対勝つからね! 自信ある!」 その言葉通り、彼は見事に勝負に勝ち、私は思いっきりほめてあげました。帰るときの彼の笑顔を今でも覚えています。
そこまでいけばもう大丈夫だろうと思い、次の授業からは教室で漢字テストを受けさせるようにしました。彼のなかでは、「漢字テスト」ではなく「先生との勝負」と認識していたのかもしれません。しかし、翌週から授業内で漢字テストを受けるようになっても、彼は100点を連続でとれるようになりました。たった二週間で、苦手だった漢字テストを克服してくれたのです。
「魔法の言葉」とはいえませんが、お子様を「乗せる」という方向を意識して声を掛けていただくと、前向きな気持ちをつくることができるのではないでしょうか。
- 2026.05.29 『魔法をかける。』


