四つ葉cafe 福田貴一 中学受験をお考えの小学生3・4年生のお子様をお持ちの保護者の方のためのブログ

『言わせていただく』

2019.01.11

小4の予習シリーズ(下)第17回国語の知識単元は、「敬語」がテーマになっています。以前、テストで「言う」の謙譲表現を問われて「言わせていただく」と答えてしまった、という話を生徒のお母様から伺いました。もちろん正解は「申す」ですので、テストの解答としてはバツになります。ただ、小4の段階での「敬語」の考え方としては、ある程度の理解はできていますよ、とお話しさせていただきました。


小3から小4の学習について、「頭の中のタンスに引き出しをつくる」という話をよくさせていただきます。科目や単元ごとに、考え方の「引き出し」をつくっていく、という感覚なのですが、イメージしていただけるでしょうか。


「敬語」について少し深く触れさせていただくと、小3から小4では「目上、目下」という感覚すらあいまいなもののはずです。「丁寧な言い方」という感覚は持っていても、相手が目上か目下かを意識して言葉を使い分けるという「新しい考え方」を理解することが、「敬語の引き出し」をつくる、という意味なのです。そして、その「引き出し」の中に必要な知識をきちんと分類しながら収納していくのは、小5からの学習に委ねることになります。きちんとした「引き出し」が小4までにつくられていれば、そこに必要な知識を整理して入れられますし、知識が整理されて入っていれば必要なときに取り出しやすくなります。


小学生の学習については、「わかる」と「できる」の違いについて語られることがよくあります。大人であれば「わかった」ことがすぐに「できる」けれど、成長過程にある小学生はそこに大きな差がある、というような話です。私は、「できる」ようになるためには、「引き出し」がしっかりつくられていることが大切だと考えています。必要な引き出しがきちんとできていて、そこに整理されて知識を入れることで、その知識を取り出して使うことが可能になる、それが「できる」ということにつながるわけです。


2月からの新学年スタートを控えた1月は、現学年の「振り返り」をすることが大切です。ただ、小3・小4の段階では、知識として定着しているかどうかよりも、この「引き出し」がきちんとつくられているか、を意識していただければと思います。一方で、小5以上では「引き出し」の中に知識が正しく入っているかを確認することも大切です。


「言う」の謙譲表現を「言わせていただく」と答えるのは、もちろん正解ではありません。しかし、「謙譲」=「へりくだる」という理解はできている、という点で、「引き出し」は用意されていると考えてかまわないでしょう。さらに「言う」のへりくだる表現として、「申す」を覚えていなくても「言わせていただく」と答えたのは、一方で敬語学習の本質をしっかりと理解できていると思うのです。


余談ですが、動詞の中には「尊敬語」「謙譲語」として別の形を持っているものの方が少ないのです。「食べる」は尊敬表現が「めしあがる」、謙譲表現は「いただく」という別の形に変わりますが、たとえば「置く」「持つ」「立つ」などの尊敬・謙譲表現は別の動詞にはならないわけです。尊敬表現としては「お持ちになる」「持たれる」、謙譲表現としては「お持ちする」「持たせていただく」といった表現を使うのが一般的です。


さらに余談ですが、この「〇〇させていただく」という謙譲表現には批判もあります。「へりくだった」表現ではあるものの、使い方によっては「謙譲」以外の意が含まれて読み取られたり、少し回りくどく感じられたりもするのです。そういった意味で、大人が使うときには気を付けた方がよい言葉かもしれませんが、小4の段階ではそこまで気にする必要はないでしょう。ただし、この表現の誤用も最近よく耳にします。「言わさせていただく」「置かさせていただく」のように、本来であれば「せる」をつけなければならない五段活用動詞に「させる」をつけてしまうものです。なんとなく、より丁寧な言い方になるような気がするのでしょうか……。


こう考えていくと、「言わせていただく」と書いた生徒はほめてあげていいようにも思えます。テストではバツなのにほめるというのは、少し抵抗がありますが……。

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