四つ葉cafe 福田貴一 中学受験をお考えの小学生3・4年生のお子様をお持ちの保護者の方のためのブログ

『小学校3年生、4年生のときに……』

2019.10.11

ノーベル化学賞を受賞したといううれしいニュースが入ってきました。昨年も医学・生理学賞で日本人の本庶佑先生が受賞されました。


今回受賞された吉野彰先生のインタビューをテレビで見ていて、一番印象に残ったのは「化学の道に進みたいと思ったのは小学校3年生か4年生のときに……」というお話でした。そのときに話題にあがっていたのが『ロウソクの科学』という本だったのですが、ご覧になられた方も多いのではないでしょうか。


小学生のときにどのような刺激を与えるのか、どのようなことを考えるきっかけをつくるのか、それはその先の将来や人生にとって、本当に大切なことなのだと改めて考えさせられた瞬間でした。日々、小学生と触れ合っている我々講師にとっては、その点をしっかりと考えて、彼らと接していくことが必要なのだと強く感じました。


当たり前のことなのですが、ノーベル賞を受賞するということは、人類のためになるような新しい発明や発見を成し遂げたということです。そこで大切になるのは「いままで誰もやっていないこと」を自らの力で切り拓くということです。


そして、その力はノーベル賞レベルの研究などではなくても、これからの世界ではとても大切なものになっていくのではないかと私は考えています。自然科学分野だけに限らず、人文科学分野においても、さらには学問や研究というフィールドではなく、社会人として生活していく中においても……。


社会に出ると「正解のない問題」に向き合わなければなりません。学生時代に取り組む多くの内容は、過去に誰かが解明した問題であり、ある程度の正解が用意されています。また、その正解やそこに至るまでの道筋を導いてくれる指導者(先生や教授)が存在しています。しかし、その正解を鵜呑みにし、または誰かに教わるだけで自ら考えだすという「学び方」をしないと、社会に出て直面する「正解のない問題」に対応するだけの力は養われないと思うのです。


一方で現代社会の進歩のスピードはめまぐるしいものがあります。一昔前、ふた昔前であれば、過去に誰かが見つけた「正解」を理解し、その理解のレベルを高めることで社会的に貢献できた時代も確かにありました。しかし、いまの、さらにこれから先の日本や世界においては、「自ら切り拓く」力が大きく求められるようになるであろうことは、ご理解、ご想像いただけることと思います。そんな時代的背景の中で、求められているのが「知識偏重」から「思考力重視」という教育改革なのです。


「自ら考え切り拓く力」、そう聞くとなにか大変なことのように思えるかもしれません。もしくは高校生や大学生になってから身に付けていくような「学び方」のようにも。しかし、私はその力の土台をつくるのは小学生の段階だと考えています。そして、そのためのトレーニングも決して難しいものではありません。


「難しいな」と感じたときに、そこであきらめずに、もう1歩踏み込んで考えてみること。「自分にはできないから質問して解決させよう」と考える前に、もう1度初めから考え直してみること。そんな気持ちで学習に向かえばよいのです。


そして、保護者の皆様にもご留意いただきたいポイントがあります。小学校のカリキュラム学習のように、その学齢で確実に身に付けることができる内容は別ですが、中学受験カリキュラムのように、その学齢では「難しい」レベルを扱うカリキュラムの場合は、「すべてをその段階で解決させよう」と考えないことです。解答を見たり、先生や親に教わったりすれば、子どもの中では「なんとなく解決した」という気持ちになってしまいます。しかし、本質的には解決しているわけではありませんし、何よりも自らの力で「解決した」という経験にはつながらないわけです。小学生の間に学ぶのは、学習内容だけではなく、その先につながる「学び方」であることをご理解いただければと思います。もちろん、中学入試においても、そういう「学び方」をしてきたかどうかが問われるような出題も増えてきているのです。

同じテーマの最新記事

2019.10.11 『小学校3年生、4年生のときに……』
2019.10.09 『ていねいに学習する ~ハノイにて~』
2019.10.04 『塾の先生に顔を覚えてもらう』
2019.10.02 『子どもへのコーチング』
2019.09.27 『スポーツの秋』
早稲田アカデミー