四つ葉cafe 福田貴一 中学受験をお考えの小学生3・4年生のお子様をお持ちの保護者の方のためのブログ

『「わからせる」だけではなく……』

2019.09.20

保護者の皆様がお子様の勉強をご覧になる際の参考になればということで、私が授業などで「心がけていること」を何回かに分けて書かせていただきます。今回は、特に小学生の指導を行う場面で一番考えていることについて触れさせていただきます。


よく「わかる」と「できる」は違う、という言葉を耳にします。大人になれば、「わかった」ことはすぐに「できる」のが普通です。大人はさまざまな経験を積んできているので、その経験を新しく学んだことにも活かせるからです。しかし、小学生は違います。「わかった」ことを自分で「できる」ようになるためには、自分の中でしっかりと「咀嚼」した上で、試行錯誤をすることが必要なのです。


年齢が上がってくれば、「わかる」と「できる」の距離は縮まってきますので、中学生の指導であれば、「わからせる」ことのみでも、生徒は自分から「できる」ようになっていきます。しかし、小学生の場合、「わかった」だけではなかなか「できる」ようにはなりませんから、その視点を持って指導をすることが大切なのです。そういう点において、小学生の授業を行う上で一番大切なことは、「わからせよう」と教えるのではなく、「できるようにする」ことを意識して指導することだと、私は考えています。


一方で中学受験カリキュラムの場合、その週に出てきた内容をすべて「できる」ようにするのは至難の業です。中学受験という高いハードルへ向けた学習ですので、その学齢では完全な理解が難しい内容も含まれているからです。言い換えると「積み残し」が前提となっているカリキュラムということになるので、その週においては「なんとなくわかっている(=積み残し)」レベルでかまわない部分も多いとお考えください。逆に言えば、どこまでを「できる」ようにするのかを考えることが大切なのです。この判断はクラス・生徒によってさまざまです。土曜YT講座(週テスト)を受講されている場合は、「がんばって勉強したら、テストでも得点が取れた」という結果はお子様の「やる気」に直結するわけですから、テストで出題されそうな問題は「できる」ようにしてあげることが必要になります。そこも意識しています。


さらに、次に同じ単元が出てくるときに、どこから学習が始まるのかを考えておくことも必要です。つまり、次に出てくるときまでに「できる」ようになっておかなければならない部分を把握しておかねばならないということです。この段階での指導は、保護者の皆様ではなかなか難しいでしょう。悩まれた場合は担当講師までご相談いただければと思います。


ご家庭において、お子様の学習(宿題)をご覧になる場合、やはり「できるように」という点は意識していただければと思います。質問してきたときに教えて「わかった?」と聞くと、きっとお子様は「うん!」と答えるはずです。しかしもう一回やらせてみると、やっぱり自分では「できない」、そんな経験をお持ちの方は多いはずです。


「できるようにするための指導をどのようにするか」という点に関しては、すべてをここで書ききることはできません。ただそのポイントをひとつだけ申し上げるとすれば、「スタートラインは生徒である」ということです。教えるスタートラインを教材・テキストにおいて指導する内容を考えるのではなく、教わる生徒から考え始めるようにする、というのが最大のポイントです。「この問題をこのクラスの生徒たちが『できる』ようになるためには、どうやって噛み砕けばよいのか。どういう問題を授業中に解説し、やらせてみるのがよいのか」。そんなところから授業の準備をしています。ご家庭でもテキストの解答や解説をそのまま伝えるのではなく、「どこでつまずいているのか、どのポイントをクリアすれば解けるようになるのか」、そんな風に考えてお子様に接していただければと思います。

同じテーマの最新記事

2019.09.20 『「わからせる」だけではなく……』
2019.09.18 『出題意図を読み取る ~記述型問題の攻略~』
2019.09.13 『いま、なにを身に付けるべきか』
2019.09.11 『「何がなんでも」という想い』
2019.09.06 『むずかしいことを簡単に教える』
早稲田アカデミー