四つ葉cafe 福田貴一 中学受験をお考えの小学生3・4年生のお子様をお持ちの保護者の方のためのブログ

『父として』

2021.08.25

ご家庭によってお父様とお母様の役割は違うことでしょう。
以前、こんな話を聞いたことがあります。子どもが生まれた瞬間から、母親は母親としての役割を果たしていくのだそうです。一方、父親はそこからどのような「役割」を自分が担うべきかを考え始めるようです。どのような父親でありたいのか、どう子どもに接していくべきなのか、と考えるのが父親としてのスタートになるわけです。「母親は子どもが生まれたときから母親」であり、「父親は『父親という役割』を演じる中で父親になっていく」と言えるかもしれません。


上記のような前提に立って、中学受験における「父親の役割」を考えた場合、「こういう父親だったら、必ずうまくいく」というようなスタイルやタイプがあるわけではありません。身近に成功した事例があるから、それと同じような父親を演じようとしてもうまくいかないでしょう。さらに前述したように、お子様が生まれてからここまで接してこられた「役割」があるのですから、中学受験を選択したからといって、それまでの「役割」を変えるのは難しいと思いますし、変えるのはよくないとも思います。


少し個人的なことを書かせていただきます。
10年前の8月の終わりに、私の父親が他界いたしました。昭和の初め生まれの人でしたので、彼が選んだ「父親としての役割」は、「昭和の父親」らしいものでした。「厳格」で「強い」父親を演じていたように思います。自分が子どもの頃は、その「厳格さ・強さ」がときにはうっとうしく、ぶつかることも多くありました。高校時代にはかなりひどい言い争いをしたことも覚えています。


そして最期まで、彼は私たちにはその姿勢を崩すことはありませんでした。息をひきとる直前の病床でも、父親としての「言葉」を聞かされました。早稲田アカデミーの夏の恒例行事「夏期合宿」から帰ってきて、病院に行ったときのことです。


「合宿は無事に終わったのか?」
「生徒たちもがんばってくれて、例年通りによい合宿になったと思う」
「例年通り?それではだめだ。毎年少しずつでもさらによくしていくという視点を持ちなさい」


そんな会話でした。
いまになってみると、彼自身の内面の「迷い」や「弱さ」を推測できるような気もいたします。やっとこの年になってではありますが。


夏期合宿で思い出しました。
まだ父親が存命中の出来事です。父はある大学の教授をしており、自分のゼミを持っていました。そのゼミ生の方々とは、卒業された後もお付き合いをさせていただいておりました。お正月などにはわざわざ父に会いに実家まで来てくださったり、「近くを通りかかったので」とお越しになったり、という方も何人もおり、親戚のようにお付き合いをさせていただいている方もいらっしゃいます。


そのうちのお一人からご連絡をいただきました。
「福田先生(父のことです)の息子さんは早稲田アカデミーにお勤めですよね?」というお電話でした。電話を受けた母が詳しく聞いてみたところ、そのゼミ(卒業)生のお子様が早稲田アカデミーの埼玉県内の校舎にお通いになっていて、私と夏期合宿で会ったのではないかという話でした。当時、私はひとつのホテルの責任者を務めていて、息子さんの中では強い印象を受けたというお話しでした。
「もうすぐ第一志望の入試なので、あの先生にも激励してもらいたい」、そんなお話をお父様になさったそうです。そして、入試直前に私の実家にお父様とお越しになりました。


息子さんは夏期合宿でもらったハチマキをお持ちになっていて、「合宿で、先生にはサインをしてもらえなかったので書いてください」と私に差し出してきました。その時に私の父が「お前も『先生』なんだな」と言った言葉を覚えています。早稲田アカデミーで働きはじめてからもう随分経っていましたから、私自身は「先生」と呼ばれるのは当たり前だったのですが、父からしてみれば息子が「先生」と呼ばれる瞬間を見たことがなかったからでしょう。


お父様(ゼミの卒業生)は、私の父を「福田先生」と呼び、息子さんは、私のことを「福田先生」と呼ぶ不思議な時間でした。


父親はきっと「子どもの幸せな未来」を思い描いていたことでしょう。私の選択した道は必ずしも彼の思い描いていた通りではなかったように思います。ただ、私自身が選んだ道を認めてくれていたのだと思っています。


10年目の命日に簡単な「10年目法要」を行いました。コロナ感染症のこともあり、家族だけで本当に簡単なものだったのですが。読経を聴きながら、そんなことを考えていました。いま私の目の前にいる生徒たち、そのお父様、お母様の想いにしっかりとお応えしていくことが、いまできることなのだという決意を新たにいたしました。

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