四つ葉cafe 福田貴一 中学受験をお考えの小学生3・4年生のお子様をお持ちの保護者の方のためのブログ

「みんな補欠だった!」

2015.10.23

ある年の2月4日、第一志望校に合格できず、ふさぎ込んでいた生徒がいました。そこへ突然飛び込んできたのが、補欠合格の電話。お母様から校舎へお電話をいただき、私も、校舎の他の職員も大喜びで、「祝合格」という短冊を掲示したのを覚えています。しかし、その日の夜、お母様から再度お電話をいただきました。「先生、息子が○○中(補欠で合格した第一志望校)には行かないって言ってるんです...」と、とても困っている感じの声でした。そこで、とりあえずお子様を校舎に連れてきてもらうことにしました。


面談室で話を聞いたところ、「補欠」ということにとても抵抗があったようなのです。「補欠で入ってもついていけないのではないか」「補欠だということがいつか同級生にばれてしまうのではないか」...そんな言葉が出てきました。


私からはまず、「補欠と正規合格の差は大きくても5点くらいで、計算問題一問くらいの差なんだ」というような話をしました。さらに、中学校に入ってからの学習は、まったく新しいものになるのだから、みんな同じスタートラインに立つことになる。だから、そこからの「やる気」と「学習の仕方」が重要なのであって、がんばり次第では、学校でトップになることも可能なんだ、というようなことも話しました。本当は「補欠は君だけではないよ」と話そうかとも思ったのですが、その年の繰り上がり状況がまだわかっていなかったので、そこには触れませんでした。


結果、彼はその学校に通うことになりました。入学式が終わって二週間くらい経過した四月のある日、制服姿の彼が校舎にやってきました。私の顔を見るなり、彼は「先生!みんな補欠だったんだよ!」と言ったのです。


面談室で話をしたとき、彼は「わかった。通ってがんばる!」と言ってくれてはいたのですが、やはり「補欠」という言葉は心の中の重荷になっていたのでしょう。ある種の「コンプレックス」になっていたのだと思います。そこに耐えかねた彼は、新しく入部したクラブで仲良くなった友達に「自分は補欠だった」と打ち明けたそうです。そして返ってきた答えは、「オレも...」。そこで二人は、部活やクラスの友人に聞き始めたそうです。結果は、「正規合格」よりも「補欠」だった生徒の方が多かったそうです。ともかく彼はそれがうれしくて(?)、私に報告するために校舎にやってきてくれたのでした。とても晴れやかな笑顔とともに。


中学入試の場合、ひとりの生徒が複数校に出願します。少なくても3~5校、多ければ7校以上という生徒もいます。そして複数校の合格を勝ち取る生徒が出てきます。しかし、通えるのは、もちろんひとつだけですから、各中学校の最終合格者数は募集定員よりも多くなります。かといって、正規合格の掲示板に募集定員の数倍の合格者を掲載するのは、はばかられるのでしょう。その結果として、補欠の繰り上がりが行われるわけです。中学校側は、正規合格者のうちどれくらいの割合が「手続き・入学」に進むかについては、過去のデータからある程度わかっています。だから正規合格者を発表したタイミングからすでに補欠の繰り上がりがスタートしていきます。「補欠」という言葉のイメージから、ある程度「入学手続きが進んで足りなくなったときに繰り上がる」というようにお考えの方もいらっしゃるでしょうが、多くの学校ではそうではないのです。合格発表を見に行き、合格者掲示板に自分の受験番号がなかったので、落ち込んで帰ってきたら、すでに自宅には「補欠繰り上がりの電報」が届いていたという話も実際にあったりするのです。


月も終わりに近づき、受験生の方は最終的な「受験パターン」を確定するタイミングとなりました。次回は志望校を選定する際に大きなポイントとなる「模擬試験と合格判定」について触れてみたいと思います。

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