四つ葉cafe 福田貴一 中学受験をお考えの小学生3・4年生のお子様をお持ちの保護者の方のためのブログ

『ウソ① ~とっさに出る言葉~』

2019.11.29

「あれ? ○○、宿題のノートが出てないぞ?」
「えっ? さっき先生の机の上に出したはず……」
小学校3年生の授業開始直後の一幕です。授業が始まる前に、宿題は教卓の上に提出しておくというルールにしているのですが、確認したところ〇〇くんのノートがありませんでした。 「本当に出したの? まだカバンの中に入ってないか、確認してごらん」
「(カバンの中を見ながら)ない……。さっきちゃんと置いたんだけど……」
そんな会話が続きました。一応、他の生徒の机の中にも入っていないかなど確認したのですが見つからず、そこからはあまり深くは追及せずに、「もし見つかったら今度持っておいで」と話して授業を開始しました。


授業後にお母様にお電話をしてうかがったのですが、結果として彼の宿題ノートは家にありました。本人が電話に出てくれて「ごめんなさい」と言ってくれたのですが、私からは「見つかってよかったね。今度の授業で持ってきてね」と話したら、「うん」と答えてくれました。次の授業できちんと提出してくれました。


「机の上に置いた」と彼が言ったのはなぜでしょう。その点について彼の心理はよくわからない部分はあります。ただ、聞かれて「とっさに」出た言葉なのは間違いないでしょう。そのときに「本当に机の上に置いたと思っていたのか」もしくは「忘れたことを叱られたくないために、とっさに『出した』と言ったのか」というのはわかりません。しかし、小学生の場合にはこういった事例はよくあることなのです。


前者であれば単純に記憶が混同していたということができます。以前の記憶が残っていて、それが今日のことのように思えたということもあるでしょう。一方で後者の場合は、意識的か無意識かは別にして、ある種の「自己保身」的な気持ちからの言葉ととらえることができます。


叱られることが好きな子どもはいません。ですから、叱られそうな場面で「自己保身」的な意識が働くのは当たり前です。その点を責めることはできません。ある程度精神的に成長してくれば、「嘘をついてもばれる」ことが理解できるようになりますし、「単にノートを忘れたこと」よりも、「嘘をつくこと」の方がよくないことだというのもわかるようになります。しかし、精神的にまだまだ成長段階にある子どもの場合は、「いま叱られる」ことを避けるために、とっさに口をついて出てしまう言葉があるのです。「すぐバレる嘘をつく」、それを「嘘をついた」と言って深く追及したりするのは避けた方がよい場合もあるはずです。


小学生の場合の、自己保身的な言動として「事実と違うことを言う=嘘をつく」という場合だけではなく、「一部の事実しか言わない=事実を隠す」というケースもあります。特に友人関係のトラブルなどの場合には、よくあるケースです。「△△くんから、イヤなことをされた」という相談を受けることがあります。その気持ちの中には、「だから△△くんを叱ってほしい」という思いがあるのはよくわかります。ただ小学生同士のトラブルの場合、片方だけに要因がある場合は多くありません。もちろん一方的なイジメ行為のようなこともありますが、それよりもお互いの行動の「感情的なもつれ」が原因となっていることの方が多いのです。


以前に、「AくんがBくんをからかった」→「BくんがAくんに口答えをした」→「さらにAくんがBくんを罵った」→「BくんがAくんのお弁当を床に投げた」というような図式が生じて、トラブルとなったことがありました。このときにAくんはそこまでの経緯を伝えずに、ただ「Bくんにお弁当を投げられた」という事実だけを伝えてきました。そこだけの行動を考えれば、Bくんが悪いことになります。しかし理由もなく他人のお弁当を床に投げるはずもないと考えて、いろいろと話を聞いたところ、そこまでの「感情的なもつれ」が見えてきたのです。初めにちょっかいを出したのが自分であることをAくんはもちろん言おうとしませんでした。


今回のテーマは2回に分けて書かせていただきます。次回は「子どもがウソをつくときの心理」について。

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