四つ葉cafe 福田貴一 中学受験をお考えの小学生3・4年生のお子様をお持ちの保護者の方のためのブログ

『お子様への接し方のアドバイス② ~クローバーセミナーアンケートより~』

2019.11.22

中学受験へ向けた学習は、入試で合格点をとるためだけのものではありません。そもそも中学校が出題する入試問題は、その学校で入学後に学んでいくための力があるかを試すためのものであり、さらにはその先の大学で学ぶ力、社会で活躍するための力とつながっていくものだと、私は考えています。


社会で活躍する、という観点で考えたときに、小学生の段階で伸ばしておくべき力のひとつに「視野の広さ・大きさ」という点が挙げられます。現在の、そしてこれからの多様性にあふれた社会で生きていくためには、より広く大きな視野が必要になると思っています。さまざまな問題を解決していくためには、より広い視野を持ち、多くの要素を考慮しながら判断することが必要になってくるはずです。


当たり前のことですが、大人と比較した場合、小学生の視野は決して広くありません。たとえば、計画性という点においても、1週間先のことすらはっきりと見えていないのが普通です。夏休みの宿題を8月の終わりになってあわててやった、という経験をお持ちの方もいらっしゃると思いますが、それも40日という小学生にとっては長い期間を先まで見通すことができなかった、ということになります。2学期の始業式直前になり、先が見えてやっと気が付いた、というわけです。中学受験へ向けた学習を通じて「視野を広げていく」ことは、精神的な成長を促すことにもつながり、結果として成績にも大きく影響を与えてくることにもなるのです。


さて、広い視野は、中学受験の各科目の学習においても必要なことですし、そういった学習を進める過程で次第に身に付いてくるものでもあります。私はよく「全体を見なさい」とか「全体像をとらえて考えなさい」と生徒を指導することがあります。広い視野を持つということは、「全体をとらえる意識を持つ」ことから始まると言ってもよいかもしれません。


国語では文章の全体が見えていないと、要旨や主題といった大切な問題には対応できません。説明文で文章の初めに出てきた具体例に気を取られて、話題や筆者の結論部分を読み違えてしまう生徒がいます。物語文でも登場人物の背景がとらえられていないために、心情がつかみきれないということもあります。もちろん、読解力という要素につながる部分でもあるのですが、その根本的な要因は「全体をとらえる力」が未熟だと言うことができるわけです。


算数でも、複雑な図形の問題などは全体をしっかりと見なければ、必要な位置に補助線を引くことができません。また算数の難問を解くためには、問題を見て「解答までの過程」をイメージするという感覚が必要になってきますが、これも「全体をとらえる」という意識が影響してくる部分です。


理科・社会も同様で、「全体」を把握してから、「細部」の学習に進むことが大切です。以前、歴史が苦手な生徒がいました。毎週、テキストに出てくる人名や語句、年号などはがんばって覚えてきていたのですが、テストではなかなか点数につながりません。歴史の学習方法についてアドバイスをするための面談で、「平安時代の前は何時代?」と問いかけてみたところ、首をかしげてしまいました。細かいところを覚えるだけで、大きな時代の流れをつかんでいなかったので、覚えた知識がふわふわしたままで定着しておらず、使いこなせるところまでにはなっていなかったのです。地理でも同じことがいえるでしょう。山脈や川の名前を覚える前に、日本地図がきちんと頭の中に入っていなければ、せっかく覚えた知識が定着しないはずです。


ご家庭でお子様の学習をご覧になるときにも、この「全体を見る、広く把握する」というポイントを意識していただくことをおすすめします。各科目の問題で間違っているとき、解き切れなかったときには、この点でつまずいているかもしれません。


もちろん、逆に単なるミスで間違えてしまっているということもあります。計算ミスなどの単純なミスで失点をしてしまうのは、非常にもったいないことです。しかし、その点にばかり気がいってしまうと、お子様自身の視野がせまくなってしまう可能性も出てきます。計算ミスをしないようにと気にすることで、そこにばかり注意がいってしまい、大きな視野で問題を見ることができなくなってしまうわけです。お子様のタイプにもよるのですが、私は小学校4年生くらいまでは、細かいミスはそれほど気にしないでください、と申し上げるようにしています。


難関中学で出題される入試問題の場合、解答に結びつく「切り口」をしっかりと考える必要があります。どの方向で考えていけばよいのか、どのような図を書けばよいのか、をまず考えてから解き始めるわけです。しかし、合否を左右するような問題(その問題を解けた生徒が合格に近付くような問題)の場合、その「切り口」に至るのは簡単ではないはずです。1つの方法を考えてみて、それではうまくいきそうにない場合、新たな方向で考えることができるというのは、とても重要なポイントになってきます。小学生にとって、この「考え直す」というのは、実は難しいことなのです。自分で一度考えついたことを捨てて、もう一度新しい視点で考え直すというのは、ある程度の訓練も必要ですし、精神的な成長も必要です。そしてその根底には、やはり「広く問題を見る」という視点が必要なのです。視野が広くなってくれば、自分が一度持った視点を切り替えて、「考え直す」こともできるようになってくるものです。

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