四つ葉cafe 福田貴一 中学受験をお考えの小学生3・4年生のお子様をお持ちの保護者の方のためのブログ

『一つひとつの言葉を大切に読み取る ~「詩」の学習~』

2022.10.28

「詩が得意な生徒は、国語力が高い」という言葉を聞くことがあります。
文章読解において「精読」するためには、一つひとつの言葉を丁寧に読んでいくことが大切です。その大切さを教えるためには、「詩」がとてもよい教材になると思っています。散文(普通の文章)と比較をすれば、韻文(詩や短歌・俳句など)は言葉が少ないのが特徴です。ですから、一つひとつの言葉を「丁寧に」読んで理解し、言葉のイメージをとらえることが必要になります。中学入試において、詩そのものが出題される学校は多くはありませんが、文章読解の力を高めていくためにはしっかりと指導する必要があると考えているのは、そんな理由からです。


さて、詩を授業で扱うときに、いくつか「知識」として教えるべきことがあります。「比ゆ表現」「体言止め」などの表現技法、「定型詩」「自由詩」「散文詩」といった詩の形式などは、知識として教えて、定着させなければなりませんが、導入段階では、あまりそれらに重点は置きません。まずは、詩とはどういうものなのか、そこに使われている「言葉」がどのようなものであるかを意識させるところから授業を進めるようにしています。


①詩を書くのはどんなとき?
私が「詩」を導入する授業では、「とってもきれいな風景を見たとき、君たちはどうするかな?」という質問から始めます。生徒たちからは、「写真を撮る」「絵に描く」といった答えが返ってきます。最近はデジカメや携帯電話(スマホ)の普及により、小学生にとっても「写真を撮る」というのは身近なことのようです。「じゃあ、もしカメラも紙も鉛筆もなかったらどうする?」と次の質問です。「覚えておく」といった答えが返ってきます。「では、とっても美味しい料理を食べて、覚えておきたいときはどうする?」と質問します。ここで生徒たちは考え始めます。「きれいなものを見たとき、美味しいものを食べたとき、うれしいとき、楽しいとき、そんなことを記憶に残しておきたいときに、言葉を使う方法がある。それが『詩』なんだよ」と話を続けるわけです。作者の心が大きく動き(感動)、それを残しておきたい、誰かに伝えたいと思ったときに、詩が生まれるということを伝えるのです。それが理解できれば、必然的に「作者の感動」は何か、という詩の読解の本質につながるわけです。


②詩は短いから、作者が伝えたいことも少ないのかな?
詩は「作者の感動」であるという点を理解させたら、そこに使われている言葉について考えさせます。散文と比較をすると、韻文(詩)は文自体が短く、使われている言葉も少ないです。ただ、作者が感動したことを伝えたいとするならば、その感動はとても大きなものでしょう。とするならば、詩に使われている一つひとつの言葉は、普通の文章(散文)以上に大きな意味を持っていることになります。「一つの言葉でたくさんのことを伝えたい、だからこそ、詩を書くときにはいろいろな工夫をするんだよ」と表現技法の話につなげていきます。


「空にマシュマロがぽっかり浮かんでいる」という比ゆ表現を考えてみましょう。これをわかりやすく言い換えなさいという問題を出すと、多くの生徒が「空に雲がぽっかり浮かんでいる」と答えます。ただ、それだけでは「マシュマロ」という比ゆ表現をきちんと説明していることにはなりません。そこで、「色は」「形は」「どんな様子」……、と問いかけをしていくと、生徒たちの中に「マシュマロ」という言葉の持つイメージが膨らんでいき、作者は、一つの言葉にそれだけのイメージをこめて表現しているのだということが理解できるようになっていきます。


余談ですが、説明的文章では、「言葉のイメージ」を膨らませるという考え方はほとんどの場合、必要ありません(ときには必要になる場合もありますが……)。逆に「言葉を拡大解釈せずにとらえる」ことの方が大切なのです。高学年の場合は、その点も含めて(文章別の読解方法の違いも含めて)指導をするようにしています。

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