
『敬語について① ~謙譲語には2種類ある~』
2026.03.18
「敬語」は、日本語のなかでもかなり難しいといわれる部分です。中学入試や高校入試の国語で出題されるものもそうですし、「ビジネス敬語」といわれるものでも、使い方に迷うことが多くあります。敬語で悩んだときに、私が参考にしているものを紹介致します。文化庁の文化審議会が平成19年にまとめた「敬語の指針」という文書です。大人向けのものですし、かなり専門的に書かれていますので、お子様が自分で見ても理解するのは難しいと思います。塾の先生の仕事は、こういった内容のものを、いかにかみ砕いてわかりやすく教えるか、というところにもあると思っています。
この「敬語の指針」のなかには、それまでの「敬語」の考え方と異なる点が書かれています。謙譲語が二つの種類に分けられたのです。この考え方についての入試問題はまだ見たことはありませんが、難関中学、あるいは難関高校ではいつか出題されるのではないかと思っています。中学入試や高校入試で出題されるとするならば……と考えて、問題をつくってみました。
(問)「謙譲語」は自分や身内の動作や状態に対してへりくだることで、相手への敬意を示す言葉です。「行く」という言葉には「うかがう」「まいる」という二つの謙譲語があります。次のア~エのうち、おかしいと感じる文はどれですか。その理由も答えなさい。なお、下記の文はすべて「上司」に対して使われているものとします。 (ア)明日、恩師の家にうかがいますので、お休みさせてください。 (イ)明日、恩師の家にまいりますので、お休みさせてください。 (ウ)明日、弟の見舞いにうかがいますので、お休みさせてください。 (エ)明日、弟の見舞いにまいりますので、お休みさせてください。
正解は(ウ)となります。皆様がこの表現を聞く「上司」であっても、(ウ)に「あれ?」と違和感を覚えるのではないでしょうか。この問題の場合、なぜ「おかしく」感じるのかを検討し、理由を説明しなければならないのですが、ここでは「敬意を表す対象」が違うということに気が付けば正解できます。「模範解答」を書いておきます。
「まいる」という言葉は、話をしている相手(ここでは「上司」)に対して敬意を表す表現なので、イ・エの選択肢は問題ありません。しかし「うかがう」という言葉は、文中に出てくる相手(ここでは「恩師」「弟」)に対して敬意を表す表現なので、ウの選択肢で「弟」に敬意を表す使い方はおかしく感じます。
上記の模範解答にあるように「敬意を表す対象=誰に対する敬語か」という点で、謙譲語は2種類に分けられているのです。「敬語の指針」では、「うかがう(行為の向かう先についての敬意)」を「謙譲語Ⅰ」として定義していて、「まいる(言葉の受け手に対する敬意)」を「謙譲語Ⅱ」としています。答申のなかには「この違いを理解することが、それぞれの敬語をより的確に使用するために必要であると考える立場に立つ」という表現も出てきます。
小学校の学習指導要領のなかでは、上記のような「謙譲語」の「敬意を示す対象」までは言及されていません。そういう視点で考えると「指導要領外」ということになってしまいますが、日本語をしっかりと使いこなすという点においては、大切になってくると思っています。文法的な知識は持っていなくても、「ちょっとおかしいな」という表現に気が付くことも、国語力を高めるためには必要なのではないでしょうか。そういう点で、最近気になっているのが、動画投稿サイトのAI音声の動画なのですが、その点はまたどこかで触れさせていただければと思います。
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