四つ葉cafe 福田貴一 中学受験をお考えの小学生3・4年生のお子様をお持ちの保護者の方のためのブログ

『ニンジンが嫌いな子に』

2022.10.26

ニンジンが嫌いな子どもに、ニンジンを食べさせようとするときには、大きく分けて二つの言い方があります。「残さず食べなさい!」という言い方と、「ニンジンにはとても栄養があるのよ、だから食べなさい」という言い方です。この二つの言い方は、同じように思えますが、そこには大きな違いがあります。


前者は理由の如何にかかわらず、強制的に食べさせる(行動させる)という言い方です。「お母さんの言うことをききなさい!」という、ある意味「親に従わせる」という手法をもって、その行動をさせるというスタイルです。後者は、子どもに「納得させる」ということに主軸を置いています。「言うことをきくことでどうなるのか」という結果を理解させることで、納得して食べる(行動する)ように促すというスタイルだと言ってもよいでしょう。


アメリカの育児書などには「子どもの『わがまま』は放置せず、譲歩しない」ということが書かれているものがあります。親子の上下関係をはっきりとさせることで、親の言うことに従わせるということのようです。「なぜそうするべきなのか」「そうしないとどうなるのか」という理由が理解できない年齢の場合などには、効果的な手法でしょう。さらには、強制されることで「なぜそうしなければいけないか」を自分で考えるようになるという効果も指摘されています。後者のように、「そうするべき理由(意味)」をきちんと説明してあげるのは、一見必要なことのように思われがちですが、その点を自分で考えるようになるという「成長の機会」を取り上げてしまう可能性もありうるわけです。


一方で、後者の「意味・理由を説明し納得させる」という手法のメリットは、きちんと意味や理由が理解できれば、「親が見ていないところ」でも、その行動をとるようになるという点です。「ニンジンを食べる」という例で考えれば、学校の給食で出されても残さずに食べるようになるわけです。ただ、きちんと理解できていなければ、また理解はしていても「食べたくない」という気持ちが強ければ、結局は食べずに残してしまうことも多くあるでしょう。


「嫌いなニンジンを食べさせる」という場合は、結果としてニンジンを食べるという行動だけが求められるので、どちらの方法でもその結果には大きな違いはありません。また、「何かをしてはいけない」という場合も、同様です。しかし、その行動による「成果」が求められる場合には、「強制される」か「行動の意味・理由を理解している」かでは、成果には違いが出てくるはずです。勉強の場合で考えれば、おわかりいただけるでしょう。


子どもに漢字の練習をさせる場合、「5回ずつ書いて覚えなさい」というのは、前者の手法です。ここでは「5回ずつ書く」という行動と、「覚える」という結果(成果)が求められています。ただ、その行動に取り組む意欲は高くならない可能性があります。漢字練習帳に5回ずつ書くという行動には取り組んだとしても、ただ書いているだけで、きちんと頭の中に入らずに(覚えることができずに)終わってしまうかもしれません。「しっかりと覚えれば、漢字テストで満点がとれるから」「次のテストで出題される範囲だから」という意味付けをして取り組ませるという手法を取り入れれば、取り組む意欲が変わってくるはずです。


つまり、「行動の成果」が求められる場合は、その「行動の質」が大切なのです。同じ行動をしていても、どれくらいの意欲を持って、どのような取り組み姿勢で行っているかで、「成果」は変わってくるのです。「家で机に座っている時間は長いのに、成績につながらなくて……」というご相談を保護者の皆様からいただくことが多くあります。机の前に座っている、テキストを開いて見ている、問題を解いている……というそれぞれの「行動」はとっていても、それが「成果」につながっていないという状態です。この場合は「家庭学習の質」を見直す必要があります。「家庭学習の質」を高めるためには、一つ一つの課題に制限時間を設けたり、集中できる環境を整えたり、家庭学習を始める前に習慣をつくったり、などさまざまな方法はありますが、まずは意欲的に取り組ませるために、その「行動(家庭学習)の意味」をきちんと理解させることが必要なのです。


さて、「嫌いなニンジンを食べさせる」ためには、まったく違う「切り口」もあることにお気づきでしょうか。「子どもが食べたくなるように、美味しく調理をする」という方法です。ここまでは、子どもが「嫌いなこと」「やりたくないと感じている行動」を「なんとかやらせる」という視点で書いてまいりました。ただ逆に、その行動自体を「自らやりたい」と感じさせるという点も、周囲の大人は意識することが大切だと、私は考えています。


勉強に関して言えば、その役割は保護者の皆様と同様に(もしくはそれ以上に)、我々進学塾の講師が担っていると考えています。そもそも、子どもにとって「新しいことを学ぶ」ことは楽しいはずですし、「難しい問題ができた」ときの喜びはとても大きいもののはずです。勉強そのものの楽しさを伝え、できたときの喜びを引きだし、自ら学習に取り組む姿勢をつくり上げていくことは、講師の大きな仕事だと、私は考えています。早稲田アカデミーは「本気でやる子を育てる」という教育理念のもと、日々の指導を行っています。その根底にあるのは、「目標を意識し前向きに取り組む」ことであり、「学ぶことの本質的な楽しさを理解させる」ことだと思っています。

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