
『協働力・心情把握・価値観の理解』
2026.05.22
数年前から「協働力」という言葉が話題になっています。ご存じの方も多いと思います。現代は「ひとりの天才が成果を出す社会から、能力の高い個が集まってチームとして成果を出す社会」になってきています。チームで成果を出すためには、他者と協力するのはもちろん、意見がぶつかったときには議論してチームの課題を見出し、解決の方向性を統一していくということが必要になるはずです。そういった能力全般を「協働力」と位置づけ、その力についても教育の中で育んでいく必要があるといわれています。東京大学の推薦型選抜等でも、論理的思考力・発想力・コミュニケーション能力・協働的に課題へ取り組む力などが評価対象となる形式が導入されています。
小学生から「協働力」を意識して育てる、というのはなかなか難しいことですが、中学校・高校などでは、そのためのさまざまな取り組みが行われています。そういった観点から学校選びを進めるのも、これからは必要なことだと思います。
さて、小学生の段階では将来の「協働力」の土台となる「コミュニケーション能力(表現力)」と、その根底にある「他者を理解する」という点を伸ばしていくのがよいと、私は考えています。「協働」するためには、「ひとりよがり」ではなく、他人の気持ちや考えを理解するところがスタートラインのはずです。そこが「協働」の基礎基盤となるのではないでしょうか。他人の気持ちを理解するのは、ある意味でとても難しいことだと思います。ただ、人間は一人では生きていけないものですから、常に他者とのコミュニケーションを意識しなければなりません。
中学入試の国語では、心情をとらえる問題がよく出題されます。登場人物が置かれている背景を理解し、気持ちが動く原因となる出来事を読み取り、そしてその結果生じた人物の行動や表情・会話から気持ちを推測する、といった手順で考える問題です。初めのうち(低学年のうち)は、表面に出てきた「行動・表情・会話」から気持ちを読み取ろうと考えます。「泣いている→悲しい」「笑っている→楽しい」というイメージです。学年が上がってくると、成長にともなって、同じ行動であっても、その原因となる事実によって様々な心情が生まれることがわかってきます。そして、人物が置かれている状況(背景)まで考えてつかむことができるようになれば、中学入試の解法としてはOKです。
「夕日を見て泣いている小学生の女の子」の気持ちを考えるときに、「夕日を見て悲しくなった」ではおかしいでしょう。原因は学校であったことかもしれませんし、家庭かもしれません。泣いているのだからつらいことがあったのだとはわかります。ただ、つらいことがあった瞬間に泣くのではなく、一人で夕日を見ているときにこぼれてきた涙であることをとらえると、性格などを含めた背景を考えることが必要になってくるわけです。
国語の問題で出される「気持ちの理解・読み取り」はある程度一般的なものです。ところが、実際の社会や生活の中では、それぞれの「背景」は様々です。単に「置かれている状況」だけではなく、その人間の「考え方」や「価値観」を理解しなければ、本当の気持ちまではわからないはずです。自分の価値観の中だけでとらえようとすると、相手の気持ちを本当の意味で理解することはできないでしょう。
お子様への接し方の基本がここにあると私は考えています。精神的な成長過程にあるお子様に対しては、大人の価値観が当てはまらない場合が多くあります。よくいわれることですが、お子様は成長に伴って、意識する対象が変わってくるものです。初めは親や先生といった「上」への意識が強いのですが、だんだんと同学年の友人やライバルという「横」を意識するようになり、最後に自分の理想や夢をかなえるためにという「下(内・自分)」を意識するそうです。もちろん、決まった時期にその年代のお子様が一斉に気持ちが切り替わるということではありません。小3から小4くらいの時期では、まだ「上」への意識が強く、精神的に成長してきたお子様は「横」へ向けた意識が芽生え始めたくらいでしょう。たとえば「勉強」に対してのモチベーションを上げることを考えても、この点を理解して接することが必要だと考えています。「自分のためなのだからがんばりなさい」という言葉は、勉強することが将来の自分のためになる、ということを教えるためには必要な言葉です。ただ意識が「上」や「横」に向いているお子様にとって、本質的に理解できるものではなく、その言葉を聞いたからといって「よしがんばろう!」という気持ちにならないのが普通です。それよりも、勉強すること・テストを受けること、そのものを親や先生に褒められることの方が、勉強に対するモチベーションが上がるのです。お子様のモチベーションを高めるためにも、子どもなりの価値観を理解して接することが必要だとお考えください。
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