『助詞の使い方を意識する』
2025.10.01
私が毎号書かせていただいている、「サクセス12」のコラムで、次号は「言語化」について触れさせていただきます。「言語化」「表現力」という話題についての話になっているのですが、「自分の考えや感情をわかりやすく相手に伝える」ために、どのような点に気をつければよいか、といったことについて、少し詳しく触れさせていただいております。早稲田アカデミーにお通いの方には、また校舎から10月下旬にお配りさせていただくと思いますので、よろしければお読みください。
今回は(というよりも「今回も」なのですが……)、書きたいと思って準備していた内容のすべては書ききれませんでした。なので、このブログで書かせていただきます。
「相手に伝わるような文章を書くとき」のポイントとして、「助詞」の使い方を意識することが大切だと思っています。このブログや雑誌記事を書くときにも、「助詞」をどのように使うかをよく考えています。また、いったん書いた文章を校正するときにも、一番気にかけるのが「助詞」です。
実は、国語力が高い生徒の共通の特徴として、助詞に対する意識が高いと、私は思っています。一方で、小3・小4の段階であれば音読をさせてみるとわかるのですが、助詞の読み間違いや「飛ばし」が目立つ生徒がいます。そういう生徒はたいてい国語を苦手としていることが多いものです。日本語の場合、助詞を一文字間違えるだけで文意は大きく変わってしまいます。そういったところに、(自然と)意識が向いているかどうかで、読解力そのものにも差が出てくると思います。
また、記述問題の解答をきちんと「まとめる」ためにも、助詞をしっかりと使いこなすことが大切になってきます。小3・小4段階では解答に必要な「要素」が入っていれば、マルをつけることの方が私は多いのですが、小5以上になってくれば「要素」だけではなく、「文としてきちんとまとまっているか」という点も心がける必要があります。そのためには、適切な助詞をきちんと使うことが必要です。
助詞は使い方だけではなく、文脈からきちんと意味を理解することも必要になってきます。例えば、「の」という助詞については、非常に便利で使いやすいものなのですが、その反面「意味」をしっかりと考えなければなりません。「先生の絵」という表現で考えてみてください。その意味するところは、大きく3つ考えることができるはずです。「先生が描かれている絵」「先生が所有している絵」「先生が描いた絵」という3つです。この点に関しては、文章を読解するときはそれほど意識する必要はありません。意味があいまいにならないように、書かれていることがほとんどですから、意識して考えなくても自然と理解ができるはずです。一方で、解答をつくるときには、あいまいな記述にならないように注意をすることが必要になります。
また、「へ」という助詞についても考えてみましょう。「成績への悩み」という表現をきいたことがあります。「成績に関する悩み」という意味だと推測されるのですが、「へ」という助詞が入っていると「悩み」そのものが「『成績』に向けられた」もののように表現されてしまうわけです。「へ」をとって「成績の悩み」とすれば問題はないのですが。「先生への相談」「母への手紙」という表現と比較していただくと、わかりやすいかもしれません。「相談」「手紙」が向けられた対象が、それぞれ「先生」「母」となるので、これらの表現に違和感はないのですが、「成績への悩み」では「悩み」が向けられる対象が「成績」ではないわけですから、少し違和感を持つわけです。 助詞ではありませんが、似たような表現では「○○に対する」と「○○に関する」という言い方があります。よく同じような意味で使われているのですが、厳密に言えば、やはり使い方は違うものです。「対する」は助詞で言えば「への」に近く、「関する」は「の」に近くなるでしょうか。
少し細かい話になってしまいましたが、国語力・読解力・作文力を伸ばしていくことを考えたときに、(小学生にとって)難しい語彙を多く身につけることはそれほど大切なことではありません。それよりも、助詞をはじめとした「表現」を正しく理解し、さらには使いこなせるようにすることが効果的だと考えています。
- 2025.10.01 『助詞の使い方を意識する』