
『算数に必要な読解力』
2025.11.12
先日11月3日に行われた「全国統一小学生テスト」の算数では、どの学年でも後半の文章題はかなりの「読解力」が求められる問題が出題されました。特に小学1年生の最後の問題や、小学3年生の大問[6]などは、ルールや条件がしっかり読み取れているかが大きなポイントになったように思います。今回は「問題を読み取る力」について書かせていただきます。
「昼と夜の長さが同じになる秋分の日ですが、今年は9月22日でした。三か月後の12月22日には冬至となり、昼の長さが夜よりも2時間短くなります。冬至の日の昼の長さは何時間でしょう」という算数の問題を考えてみます。早稲田アカデミーのカリキュラムでは小学3年生で出てくる問題です。
まずは余談ですが、理科的に考えると上記の問題には少しおかしなところがあります。春分の日、秋分の日は一般的には「昼と夜の長さが同じ日」とされていますが、「日の出」や「日の入り」の定義なども考えると7~8分ほどの違いがあるそうで、厳密には「同じ」ではないようです。今回の問題は、理科ではなく算数の問題となりますので、文中に与えられている条件が正しいと仮定をして、考えるようにしてください。
さて、では問題に戻りましょう。気付かれた方も多いと思いますが、この問題は単純な和差算の問題です。答えを出すための式は…… (24-2)÷2=11 答 11時間 となります。
「AくんとBくんが合計で24個のアメを持っています。Aくんの方が2個多く持っているとすると、Bくんは何個持っているでしょう」という問題と、考え方はまったく同じです。しかし、アメの問題はできても、冬至の問題ができない生徒が多くいます。それは文章題を読んだときに、書かれている条件をしっかりと理解し、不必要な情報は削り、必要な情報を補って、最終的に問題の本質と解法にたどりつく、という経験が不足しているためです。
算数の授業では、新しい単元を学習するときに、解法(解き方)をまず初めに教えます。「和差算」であれば「線分図」を書いて解く、といった方法になります。そこから、いろいろな形で出される文章題に挑戦していくことになるわけです。まずはすぐに解法にたどりつく問題から解かせるようにしていくのですが、そこからだんだんと複雑な条件の問題になっていきます。
冬至の問題を少し詳しく分析して、和差算の解法は理解していても、解けなかった生徒の「頭のなか」を考えてみたいと思います。
設問文には、日付が書いてあったり「三か月後」という条件が書いてあったりしますが、これらはすべて不要な情報です。これらの不要な情報を削り、シンプルな形にすると「昼の長さが夜の長さよりも2時間短い日の昼の時間は何時間でしょう」という問題になるわけです。実はここまできても、まだ正解にたどりつけないケースがあります。この点については、アメの問題と比較をしていただくとわかります。アメの問題では「24個」という合計数(和)が書かれていますし、「2個」という差もありますので、すぐに「和差算」だと気が付くはずです。一方で冬至の問題では「一日は24時間」という前提が書かれていませんから、そこを頭のなかで補うことが必要なわけです。大人からすれば至極当たり前のことでも、小学生にとっては、気が付かないポイントだったりします。
よく「算数の文章題を解くためにも読解力が必要」といわれます。読解力といっても、国語で学習する「読解力」とはまた違うものなのです。「何を問われているか」をしっかりと読み取り、文章中に書かれている条件を整理分析し、解法に至る道筋(「解答」ではありません)をきちんと考える……それが「算数に必要な読解力」だとご理解ください。
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