
『秋晴れが恋しい……』
2026.10.02
9月中は「おひさま」を見る機会がほとんどなかったような気がします。以前、体調管理の記事を読んだことがあるのですが、そのとき「人間にとって大事なのは『食・浴・眠』の三つ」ということが書いてありました。このうちの「浴」は入浴ではなく日光浴という話でした。私も日光を浴びると元気になるような気がします。
小学4年生の国語の授業で、「天高く馬肥ゆる秋」という表現が出てきました。秋という季節は、暑くもなく寒くもなく素晴らしい季節だということを表した言い回しなのは、保護者の皆様であればご存じでしょう。聞いたことがある生徒もいたようですが、ちゃんとした意味までは理解できていないようでした。
「馬肥ゆる秋」については、秋は収穫の季節でもあり、「食欲の秋」という言葉からもわかるように食べ物が美味しく感じられる時期だという点については、すぐに理解してくれました。一方で「天高く」という部分については、なかなか説明が難しく感じました。「秋の空が高いっていわれるのは知っている?」と質問してみたのですが、残念ながら、ちょっと不思議そうな顔をされてしまいました。 「空はいつでも高いじゃん……」 「夏とあんまり変わらないよ」 などという声も返ってきたのですが、「そんなことないよ、ちゃんと晴れた日に空を見てごらん」という話をしました。
理科の話になるのですが、秋に空が高く感じられるのにはいくつかの理由があるそうです。一つには空気中の水蒸気が少なく、さらに空気が澄んでいて、空の青さ(宇宙の色)が濃く見えるからだそうです。もう一つは、夏と比べて上昇気流が弱くなるため、入道雲のように地面から近い雲ではなく、空の高いところの雲が多くなるからとのことでした。理科の単元でいうと地学分野の内容となり、早稲田アカデミーのカリキュラムでは小学5年生で詳しく学習する内容になります。
「空が高い」といった国語的な表現のなかには、自分自身が実際に感じていなければなかなかわからないことが多くあります。その表現を目にしたり、耳にしたりしたときに「確かにそうだな」と思えることが必要なわけです。そのためには、机の上でテキストとノートを広げて学習するだけではなく、毎日の生活のなかで学び、感性を磨くことが必要になります。特に日本人の感性としては「四季に対する感覚」が大切なものになってくると思っています。
「空が高い」という話から、続けて「柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺」という正岡子規の有名な俳句の話をしてみました。4年生の学校教科書でも載っている場合があるようで、この句自体はほとんどの生徒が知っていました。しかし、この句がどういう意味を持っているのか、なぜ有名な俳句なのか、そういったところが理解できている生徒はいませんでした。そこで、この句も秋の澄んだ空気を感じさせるものであるという話をしていきました。赤い柿の実と青く澄んだ空の対比、鐘の音の澄んだ余韻、そこから感じられる秋の空気感……。さわやかな秋の一日をイメージできるように授業を展開していきました。
「柿くへば……」の俳句の「柿」は秋の季語として使われています。この「季語」という言葉からもわかるように、日本人にとって「四季」が大きな存在となっているのはご存じの通りです。季語だけではなく、手紙文の「時候の挨拶」などにも季節を表す言葉が使われますし、毎日の挨拶でも気温や天候に関する言葉を交わすのが、日本では一般的です。「今日も暑いですね」「涼しくなりましたね」「雪が降りそうですね」などといった挨拶は、四季がある日本だからこそだという話を読んだことがあります。確かに東南アジアなどには、一年を通して暑い国がありますが、そういった国では「毎日暑いですね」という挨拶は交わされることがないのでしょう。
日本人の季節感には、単に「春夏秋冬」という四季だけではなく、「早春」「初夏」「晩秋」といったような四季をさらに細かく分けるような表現もあります。そして、その言葉にもそれぞれのイメージが含まれています。たとえば「晩夏」という言葉からは、夏の終わりのなんとなくの寂しさが含まれているように。
「夏の夕方にザっと降る雨のことをなんというでしょう?」……この質問に対して、普通であれば「夕立」という答えになるはずです。しかし、現代の小学生の何割かは「ゲリラ豪雨」と答えてしまうのではないでしょうか。「夕立が降ったあとは地熱が冷まされて涼しくなる」というのも一昔前の話になってしまったようで、「ゲリラ豪雨の後は蒸し暑さが増す」ということもあるようです。夏の風物詩の一つである「浴衣」も、夏の盛りの「盆踊り」や「花火大会」の時期に着るのは暑すぎるので、8月の終わりから9月にかけての「秋祭り」などで着られることが多くなった、という話も聞きました。
それにしても、からっとした「秋晴れ」が恋しいと思う毎日です。
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