『「がんばれ」言うな……』

2023.09.01

早稲田アカデミーの「熱い夏」が終わりました。「やるか、やらぬか、夏アカ。」という合言葉のもとで実施されてきた「夏期講習会・夏期合宿・夏期集中特訓」ですが、各校舎ですべてのカリキュラムが無事に終了いたしました。小学生の新学期開始は９月４日からとなります。各学年でテキストも新しくなりますので、新鮮な気持ちで授業に取り組めるのではないでしょうか。

夏にがんばったお子様は、一学期と比べて「集中力」も「時間単位の学習密度」も高くなっているはずです。国語の文章を読むスピードも、記述解答を書く速さも変わっていることでしょう。算数の計算も図を書くスピードも速くなっているはずです。「勉強の秋」をむかえ、さらに学習効果の高まるような「一週間の基本スケジュール」をお考えいただければと思います。

今回の記事は、夏休みに生徒の皆さんと一緒に過ごしてきた中での雑感を。
夏期講習会では、普段の授業と違って、毎日生徒たちに会います。夏期合宿や集中特訓でも、集中して４日間・５日間、一緒に過ごすことになります。そんな期間にはいつもは気がつかない、生徒たちのいろいろなところが見えてくることがあります。

神奈川県代表の慶應義塾高校が優勝した甲子園大会（正式名称は「全国高等学校野球選手権大会」というそうですが……）の決勝戦が行われている時間帯に、私はちょうど小学生の授業をしていました。生徒たちはもちろん真剣に授業を受けていたのですが、休憩時間に「そういえば、いま決勝やっているんだよね」と話をしたところ、神奈川県に住んでいる生徒がほとんどということもありますし、「慶應」を志望校として考えている生徒が多い校舎ということもありますので、みんなとても気になっているようでした。その中の一人、普段はおとなしめの女子の生徒が、「慶應義塾高校」の選手について語りはじめました。一人ひとりの選手の名前やその特徴などを。野球に興味がありそうには見えていなかったのですが、彼女の新しい一面に気がついた瞬間でした。

夏ですので、Ｔシャツを着ている生徒が多くいます。夏期合宿でもいろいろなＴシャツを見ました。私が学生時代に好きだった洋楽のロックバンドのＴシャツを着ている生徒がいて、「そのＴシャツのバンド知っているの？」と尋ねたら、「パパのだから、ボクは知らない！」と答えました。日本のアーティストＴシャツを着ている生徒も何人かいて、「ママと一緒に行ったときに買ってもらった」という生徒もいました。

もちろん「NIKE」や「adidas」、「PUMA」といったスポーツＴシャツを着ている生徒も多いのですが、いろいろ個性的なＴシャツを着ている生徒が最近は増えたような気がしています。校舎でもいろいろなＴシャツを見ました。家族旅行で行った国や都市の名前が入ったものも多く見ます。「Honolulu」「Bangkok」「Madrid」は、今年見ました。「先生もむかし行ったことあるよ」という話をするとうれしそうな顔をしてくれます。「パパが出張で行ったときのお土産」という話をしてくれた生徒もいます。こだわりのあるＴシャツを着ている生徒もいます。好きなプロ野球チームやサッカーチームのＴシャツをほぼ毎回着てくる生徒もいます。ポケモンが好きな生徒は、いろいろなポケモンＴシャツを着ています。「今日はなんのポケモン？」と聞くと、名前だけではなく、特徴や進化するとどうなるかなどを詳しく教えてくれます。

最近、いろいろなところで見かける「おもしろＴシャツ」を着てくる生徒もいます。講師室に質問にきた生徒の胸には「やればできる子です」というメッセージが書かれていました。それを見た私は、彼に「やればできる子、っていうことは、やらなければできない、っていうことなんだよ。だからがんばれ！」と声をかけました。彼は笑顔で大きくうなずきました。

数年前のことですが、いまでも覚えているのは、夜まで自習室でがんばっていた生徒の背中に書かれていた文字です。「遅くまでやっているね、がんばれ！」と声をかけようと思ったところ、その背中に書かれていたのは……「がんばれ言うな、がんばっとんねん！」
なにも声をかけられずに、見守りました。

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