四つ葉cafe 福田貴一 中学受験をお考えの小学生3・4年生のお子様をお持ちの保護者の方のためのブログ

『全体を見る、広く把握する』

2023.09.08

小学生の指導をする上で、私が気をつけていることの一つに「小学生の視野や視点を理解して接する」というポイントがあります。ご家庭でお子様と接する際のヒントになると思いますので、今回はそのテーマで書かせていただきます。


大人と比較した場合、当たり前のことですが、小学生の見ている視野・視点は広くありません。たとえば、計画性という点においても、小学校低学年の場合は、一週間先のこともはっきりとは見えていないのが普通です。夏休みの宿題を8月の終わりになって、あわててやったという経験のある方もいらっしゃると思います。それも40日間という小学生にとっては長い期間を先まで見通すことができずに、二学期の始業式直前になってやっと気がつく、という子どもらしさの部分だということでもあるわけです。


中学受験へむけた学習を通じて、この視野を広げていくということは、精神的な成長を促すことにもつながるはずです。そしてそれは、成績にも大きく影響を与えることになるでしょう。私はよく「全体を見なさい」とか「全体像をとらえて考えなさい」と生徒を指導することがあります。広い視野を持つということは、「全体をとらえる意識を持つ」ことから始まると言ってもよいかもしれません。


国語では文章の全体が見えていないと、要旨や主題といった大切な問題には対応できません。説明文で文章の初めに出てきた具体的な例に気を取られて、話題や筆者の結論部分を読み違えてしまう生徒がいます。物語文でも登場人物の背景がとらえられていないために、心情がつかみきれないということもあります。もちろん、読解力という要素につながる部分でもあるのですが、その根底には「全体をとらえる力」が未熟だということもできるわけです。算数でも、複雑な図形の問題などは全体をしっかりと見なければ、必要な位置に補助線をひくことができません。また算数の難問を解くためには、問題を見て「解答までの過程」をイメージするという感覚が必要になってきますが、これも「全体をとらえる」という意識が影響してくる部分です。


理科・社会でも「全体」を把握してから、「細部」の学習に進むことが大切です。以前、歴史が苦手な生徒がいました。毎週、テキストに出てくる人名や語句、年号などはがんばって覚えてきていたのですが、テストではなかなか点数が上がってきません。歴史の学習方法についてアドバイスをするための面談で、「平安時代の前はなに時代?」と問いかけてみたところ、首をかしげてしまいました。細かいところは覚えていたのですが、大きな時代の流れをつかんでいなかったようなのです。そのため、覚えた知識がふわふわとしたままで、きちんと定着しておらず、使いこなせるというところまでにはなっていなかったのです。地理でも同じことが言えるでしょう。山脈や川の名前を覚える前に、日本地図がきちんと頭の中に入っていなければ、せっかく覚えた知識が定着しないはずです。


ご家庭においてお子様の学習をご覧になる際は、「全体を見る、広く把握する」というポイントを意識していただくことをおすすめしています。各科目の問題で間違っているとき、解ききれなかったときには、この点でつまずいているかもしれません。逆に単なるミスで間違えてしまっているということもあるはずです。計算ミスなどの単純なミスで失点をしてしまうのは、非常にもったいないことです。しかし、その点にばかり気がいってしまうと、お子様自身の視野がせまくなってしまう可能性も出てきます。計算ミスをしないようにと気にすることで、そこにばかり注意がいってしまい、大きな視野で見ることができなくなってしまうわけです。お子様のタイプにもよるのですが、私は小学4年生くらいまでは、細かいミスはそれほど気にしないでください、と申し上げるようにしています。


さらに、視野を広く持つことができるようになると、視点を切り替えることができるようになってきます。
難関中学で出題される入試問題の場合、解答に結びつく「切り口」をしっかりと考える必要があります。どの方向で考えていけばよいのか、どのような図を書けばよいのか、といった点をまず考えて解き始めるわけです。しかし、合否を決めるような問題(その問題を解けた生徒が合格に近づくような問題)の場合、その「切り口」をすぐに思いつくわけではありません。一つの方法を考えてみて、それではうまくいきそうにない場合、新たな方向で考えることができるかというのは、とても重要なポイントになってきます。小学生にとって、この「考え直す」というのは、実は難しいことなのです。自分で一度考えついたことを捨てて、もう一度新しい視点で考え直すというのは、ある程度の訓練も必要ですし、精神的な成長も必要です。そしてその根底には、やはり「広く問題を見る」という視点が必要なのです。視野が広くなってくれば、自分が一度持った視点を切り替えて、「考え直す」こともできるようになってくるはずです。

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