『集中力が続かない……』
2025.03.12
先日、新小学4年生のお母様からご相談をいただきました。簡単にいえば「集中力が続かなくて……」というご相談でした。お子様の家庭学習のご様子をご確認いただくなかで、多くの保護者様がお感じになることではないでしょうか。
もちろん、学習効果を高めるために、また成績を向上させるためには、授業や家庭学習における「集中力」は必要です。例えば暗記をするときに、集中力が欠けてしまえば覚えることはできませんし、問題を解いているときであれば正解までたどり着けないと思います。テストで実力を大きく下回る成績を取ってしまった場合は、なんらかの要因でテスト中に「集中力」が途切れてしまった可能性もあるでしょう。
「集中力」による差がはっきりと表れるのが、国語の文章読解です。文章を読んで全体の内容や構成を理解し、それを頭に入れた状態で問題を解いていくのが、国語の文章読解問題の解き方の基本です。算数であれば、文章問題であっても文章を頭に入れておくのはせいぜい5分ほどですが、国語の場合、少なくとも10分以上はその文章をずっと頭のなかに置いておかなければならないわけです。いったん集中力が途切れてしまえば、そこで頭のなかに入っていた文章内容はどこかに消えていってしまいます。そうすると、もちろんその先の問題を解くことはできません。テストの場合であれば、選択肢を適当に選んだり、マス目を適当に埋めてみたり……と、トンチンカンな答案をつくることになって、それをご覧になった保護者の皆様は「文章が全然理解できていない」とお感じになるわけです。「うちの子は読解力がない」「理解力がない」「国語は苦手」、というような評価につながり、それを聞いたお子様自身も「自分は国語が苦手なんだ」と思い込んでしまうのです。こうなると、後は悪循環です。問題を解いていても苦手意識が先に立って自信が持てず、選択肢で悩んだり迷ったり、記述問題を空欄のまま残してしまったり……というような状態に陥ってしまいます。
さて、では「集中力がない」という状態は、「悪いこと」なのでしょうか。私は、「よい」「悪い」と簡単に言い切れるものではないと考えています。
ドラマや漫画などでは、登場人物が集中しなければならないとき、他の考えがよぎったり眠気が襲ってきたりすると、それを振り払うように頭をブンブンと振るシーンを見かけることがあります。こういった動作を小学生がやるようなイメージをお持ちの方は少ないでしょう。自分が「今、集中力を欠いている」という認識を持てる大人(高校生以上くらいでしょうか)が、それを自覚して「いけない、集中しなければ!」と思って行う動作ですから、小学生がやっていたらある意味滑稽に感じてしまうのではないでしょうか。そもそも低学年から中学年の子どもは、「集中する」ということそのものがよくわかっていません。いろいろなことが気になってしまうのは、子どもとしてはある意味当然のことです。また、すぐに飽きてしまうのも当たり前です。まずは、集中するということを理解し、身につけるようにすることがスタートだとお考えください。
お子様が学習に集中できていないなあ、と感じられたときに、皆様はどうなさいますか。多くの方が「もっと集中しなさい!」と声をかけるのではないでしょうか。しかし、実はその言葉の効果はあまり高くありません。「自分は今集中できていないんだ」と認識することにはつながるかもしれませんが、そこからどのようにすれば集中できるかは、お子様自身では、まだまだ解決できないはずです。
私は、小学3・4年生ごろまでは、集中できていないときは学習を継続しない方がよいと考えています。集中できていないのに無理やり学習を続けさせてしまうと、ダラダラとした学習になってしまいます。時間ばかりかかってしまい、その間頭はほとんど回転していない……そんな状態が続きます。一番怖いのは、そんな状態を「勉強している」と思いこんでしまうことなのです。
保護者の皆様からよく寄せられるご相談に、「時間をかけて勉強はしているけれど、成果につながらない」というものがあります。お子様のご様子を伺うと、上記のようなダラダラ学習を継続してしまっていることが多くあります。お子様が「集中していないな」と感じられたときは、いったん学習を打ち切ってしまうのもひとつの方法です。
そして、ここからが大切なのですが、集中できていない要因を探るようにしてください。お腹が減っている、体が疲れている、見たいテレビがある、などの外的な要因もあるでしょうし、悩み事や不安なことなどの内的要因の可能性もあるでしょう。お子様がどんなときに学習に集中できないのかをしっかりと把握をすることは、家庭学習の成果を高めるためにとても大切な保護者の役割とお考えください。
さて、「集中力がない」と評価されがちなお子様には、総じて「頭の回転が速い」タイプであることが多いと、私は考えています。頭の回転が速いために、次々といろいろなことが気になり始め、一つのことに集中できなくなってしまうことが多いのです。一方で、このタイプのお子様の場合、いったん集中すると一気に片付けてしまうことも多いはずですから、短時間での学習をお勧めすることが多くあります。逆に長時間の学習や暗記などの地道な作業は苦手なことが多いので、(もちろん将来的にはそれも必要なのですが)小3・小4の段階では得意な部分を優先的に学習させるようにしておくとよいでしょう。
「集中力」をいきなり向上させる特効薬などはありません。お子様のタイプを理解して、集中できる環境や時間を用意してあげることが大切です。ある程度の経験が身につき、併せて精神的な成長が伴ってくれば、自然と小学生としての「集中力」は身についてくるものです。
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