『小数の学習』
2025.06.18
早稲田アカデミーのカリキュラムでは、小3の6月に「小数」の導入を行います。小3から小4の算数の授業では、他にもいくつか新しい単元の「導入」授業があります。私はこの「新単元導入授業」を行うときには、毎回少し緊張して授業に臨んでいます。
保護者会やセミナーなどでもお話ししているように、「はじめの一歩」をどう踏み出すか、というのはとても大切です。単に「知識」として教えるだけであればそれほど難しくはないのですが、その単元の「本質的」な部分をきちんと理解させるためには、教え方を考え、工夫することが必要になってきます。最初の導入段階で本質的な理解ができれば、そこから世界は大きく広がっていきます。一方で、単に知識としてしか学ばなかった場合、その先に進むときにはまた新たに「覚える」ことが必要になってしまうのです。
以前にも書かせていただいたのですが、「わり算」について学ぶときに、最初の段階で、その式の本質的な意味をきちんと理解できていれば、使いこなせるようになるのですが、そこの理解が不十分だと発展的な問題にはつながっていきません。「80÷5=16」というわり算には「80を5つに分けるとひとつは16」という意味だけではなく、「80の中に『5』は16個ある」という意味があることを理解しているかどうかで、「わり算」が使える問題の範囲が大きく変わってくるのです。
「ABCDEABCDEABCDE……と規則的に文字が並んでいます。80番目までにAはいくつあるでしょう」という周期算の問題があります。「ABCDEという5つの文字の『まとまり』が、80個目までにいくつあるかを考えてみよう」と話したときに、わり算の「後者」の意味を理解していれば、すぐに「80÷5」という式を思いつくことができるはずです。一方でそこが理解できていないと、「周期算はわり算を使う」という知識を「覚える」ことになってしまいます。
小数の話に戻りましょう。小数の単元導入では、それまで「整数」だけの世界で考えてきた小学3年生に、いきなり新しい概念を教えることになります。つまり、それは単に「小数点」や「小数第一位」といった知識を教えるだけではなく、お子様にとっての「数の世界」を一気に広げる、ということなのです。
小数を学ぶまで、「0の次は1」というのが、お子様にとっての数の世界でした。ところが、小数を学ぶことで、お子様は「0と1の間」にたくさんの数がある、ということを知るのです。そして、その間にはまさに「無数」の数がある、ということも。お子様にとっては、大きなカルチャーショックになるのではないでしょうか。その「カルチャーショック」をしっかりと味わってもらいたいのです。そのある種の「不思議さ」をしっかりと心に刻みながら、成長していってほしいと思っています。
小4では「小数」「分数」でこんな話をすることがあります。 「1÷7=0.14285714285714……」 「6÷7=0.85714285714285……」 永遠に終わりのない「循環小数」となります。 一方で「(1÷7)+(6÷7)=7÷7=1」となります。さて、「1÷7」「6÷7」の答えになっている循環小数の各位を足してみてください。「0.999999999999……」。
数学の世界では「1≒0.9999999999……」ということになっているのですが、単にその知識を知っているということではなく、そこに「ちょっとした不思議」を感じるようになってほしいと思っています。
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