四つ葉cafe 福田貴一 中学受験をお考えの小学生3・4年生のお子様をお持ちの保護者の方のためのブログ

『コンセントレーション』

2022.07.29

「コンセントレーション」という言葉があります。「集中力」「集中してものごとに取り組む力」という意味です。受験勉強に取り組む子どもだけではなく、大人になってからも必要な力です。中学受験へ向けた学習の中で、この力を育んでいくのも、将来のためには大切なことだと私は考えています。早稲田アカデミーでは夏期講習会が行われています。毎日、お子様が授業から帰って、宿題(家庭学習)に取り組んでいる様子をご覧になる機会も多いと思いますので、今回は家庭学習における「集中力」について書かせていただきます。


学習効果を高めるため、また成績を向上させるためには、授業や家庭学習における「集中力」が必要です。たとえば、暗記をするとき集中力が欠けてしまえば覚えることはできませんし、問題を解いているときであれば、正解までたどり着けないでしょう。テストで、実力を大きく下回る成績をとってしまう場合などは、なんらかの要因でテスト中に「集中力」が途切れてしまったことによる可能性もあるでしょう。


算数でももちろんそうですが、国語の文章読解ではよりはっきりと集中力による差が出てきます。文章を読んで、全体の内容や構成を理解し、それを頭の中に入れた状態で問題を解いていくのが国語の文章読解問題の解き方の基本です。算数の文章問題であればせいぜい5分ほどで内容を読み取り考えていけばよいのですが、国語の場合には少なくとも10分以上の時間をその文章を理解することに割かなければなりません。そのあいだ、ずっと頭の中にその文章を置いておかなければならないわけです。いったん集中力が途切れてしまえば、そこで頭の中に入っていた文章内容はどこかに消えてしまいます。そうすると、もちろんその先の問題を解くことはできなくなってしまいます。テストの場合であれば、選択肢を適当に選んだり、マス目を適当に埋めてみたり……。結果、あいまいな答案用紙をつくることになってしまい、それをご覧になった保護者の方は「文章が全然理解できていない」と感じてしまうのです。その結果、読解力がない、理解力がない、国語は苦手、といったような評価につながり、それを聞いたお子様自身も「自分は国語が苦手なんだ」と思い込んでしまうようになります。そうすると後は悪循環です。問題を解いていても苦手意識が先に立って、自信のないまま選択肢で悩んだり迷ったり、記述問題でも空欄を残してしまったり、というような状態に陥ってしまうのです。


では「集中力がない」のは本当に悪いことなのでしょうか。実は、それは「よい」とか「悪い」とかの問題ではないと、私は考えています。ドラマや漫画などでは、集中しなければならないときに他の考えが頭の中をよぎったり、眠気が襲ってきたりすると、それを振り払うように頭をブンブンと振るシーンを見かけることがあります。あんな動作を小学生がやるようなイメージをお持ちの方は少ないでしょう。自分がいま集中力を欠いているという認識を持てる大人(高校生以上くらいでしょうか)が、それを自覚して「これではいけない、集中しなければ!」と思って行う動作ですから、小学生がやっていたらある意味滑稽に感じてしまうでしょう。


そもそも小学校低学年から中学年では、「集中する」ということそのものがよくわかっていません。いろいろなことが気になってしまうのは、子どもとしてはある意味当然です。また、何かに飽きてしまうのも当たり前です。まずは、集中するということを理解し、身に付けようとすることからがスタートだとお考えください。


お子様が学習に集中できていないなあ、と感じられたときに皆様はどうなさっていますか。「もっと集中しなさい!」と声をかけることもあるでしょう。しかし、実はその言葉の効果はあまり高くはありません。自分はいま集中できていないんだ、ということを認識することにはつながるかもしれませんが、そこからどのようにすれば集中できるかは、お子様自身では、まだまだ解決できないはずです。


小学校の低学年から中学年までは、集中できていないときには、学習を継続しない方がよいことの方が多いと、私は考えています。集中できていないのに無理やり学習を続けさせてしまうと、ダラダラとした学習になってしまいます。時間ばかりかかってしまい、その間、頭はほとんど回転していない……そんな状態が続きます。一番怖いのは、そんな状態を「勉強している」と思いこんでしまうことなのです。


保護者の皆様からよくご相談いただくこととして、「時間をかけて勉強はしているのだけれど、成果につながらない」というものがあります。お子様のご様子をうかがうと、上記のようなダラダラ学習を継続してしまっていることが多くあります。お子様が「集中していないな」と感じられたときは、いったん学習を打ち切ってしまうのもひとつの方法です。


そして、ここからが大切なのですが、集中できていない要因を探るようにしてください。お腹が減っている、体が疲れている、見たいテレビをやっている、などの外的な要因もあるでしょうし、悩み事や不安なことなどの内的要因の可能性もあるでしょう。お子様がどんなときに学習に集中できないのかをしっかりと把握することは、家庭学習の成果を高めるためにとても大切な保護者の役割とお考えください。


さて「集中力がない」というお子様は、総じて「頭の回転が速い」タイプなことが多いと、私は考えています。「回転が速い」と聞くと何かよいイメージにもなりますが、ほめているのではなく、単にそういうタイプだとお考えいただければと思います。頭の回転が速いために、次々といろいろなことが気になり始め、ひとつのことに集中できなくなってしまうことがあります。一方で、このタイプのお子様の場合、いったん集中すると一気に片付けてしまうことも多いはずですから、短時間での学習をおすすめすることが多くあります。逆に長時間の学習や暗記などの地道な作業は苦手なことが多いので、(もちろん将来的にはそれも必要なのですが)小3・小4の段階では得意な部分を優先的に学習させるようにしておくとよいはずです。


「集中力」をいきなり向上させる特効薬などはありません。お子様のタイプを理解して、集中できる環境や時間の中での学習を継続させ、あわせて精神的な成長がともなってくれば自然と小学生としての「集中力」は身に付いていくはずです。

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