四つ葉cafe 福田貴一 中学受験をお考えの小学生3・4年生のお子様をお持ちの保護者の方のためのブログ

『子どもの心理を考える②』

2022.10.05

毎年10月にノーベル賞が発表されます。10月3日には医学生理学賞が発表され、スバンテ・ペーボ教授が、ネアンデルタール人のDNA配列の解読に成功した研究で受賞されたというニュースがありました。ペーボ教授は「沖縄科学技術大学院大学(OIST)」の客員教授も務めていらっしゃるとのことで、日本に関連した方が今年も受賞されたのは、うれしいニュースだと思って聞いていました。


小6受験生にはよく話すのですが、多くの中学校で入試問題は夏休み中につくり始められるため、秋から冬にかけての「時事問題」が取り上げられる可能性は大きくはありません。ただ、ノーベル賞だけは気をつけて見ておいた方がよいと思っています。今回の医学生理学賞でいえば「人類の進化」という点で、ちょっと気にしておいてもよいと思います。


この後、10月10日までの間に、「物理学賞(4日)」「化学賞(5日)」「文学賞(6日)」「平和賞(7日)」「経済学賞(10日)」といった順で発表されていきます。日本人でも候補にあがっている方もいらっしゃるようなので、注目していきたいと思っています。個人的には、昨今の世界的な社会情勢を考えると、「平和賞」「経済学賞」でどのような方が選ばれるのかは気になっています。


さて、本題です。前回の記事の続きとして「子どもの心理」について書かせていただきます。前回は、子どもの嘘は「とっさに口をついて出てしまう言葉」であり、自己保身的な意識が(もしくは無意識の中でも)そこにはあるという内容を書かせていただきました。今回はその点に関して、さらに詳しく触れるとともに、その裏にある心理についてもお話しさせていただきます。


叱られることを避けるために、もしくは叱られているときに、とっさに口をついて出る言葉は、「その場しのぎ」でしかないことが多いはずです。「叱られたくない」「なるべく早く許してもらいたい」という意識の中で、本来は思ってもいないことが口から出てしまうケースは、保護者の皆様も経験したことがあるのではないでしょうか。


塾がある日に友達と遊ぶ約束をしてしまい、お母様には塾に行くふりをして、友達と公園で遊んでいた生徒がいました。早稲田アカデミーからの欠席連絡(事前にお休みの連絡をいただいていない場合に、ご家庭に確認をさせていただく電話)で事態を把握されたお母様が遊んでいるお子様を公園で見つけて、そのまま校舎に連れていらっしゃいました。私も一緒にお話しさせていただいたのですが、厳しく叱っているお母様に対して、お子様は「もう二度と友達とは遊ぶ約束をしない」ということを言い出しました。お母様はその言葉を信じて「それをちゃんと約束しなさい!」とおっしゃったのですが、私はそれをお止めしました。小学生にとって「友達と遊ぶ」ということは、言うまでもなく大切なことです。もちろんそのお子様も「友達と遊ぶ」ことをやめてもいいとは思っていないはずです。ただ、その瞬間は「もうこれ以上叱られたくない」という思いから、さらには「自分が悪いことをした」という反省の思いから、「極端な」ことを言い出してしまったわけです。「そんなことをしたくない」という自分の本心や、「そんなことができるはずがない」という考えよりも、「いまこの瞬間のお母さんの怒りを鎮めたい」という気持ちが上回ってしまったための言葉なのだと思います。そういった「その場しのぎ」の言葉を真に受けてしまうと、また「約束を守れていない」「嘘をついた」とお子様を責めなければいけない事態につながってしまうこともあるはずです。


「その場しのぎの言葉」にしても「自己保身的な嘘」にしても、お子様自身が精神的に成熟していないことがその背景にはあるはずです。ある程度「大人」になってくれば、「すぐバレる嘘」をつくことはなくなるはずです。また「できるはずのない約束」をすることもしなくなるでしょう。その「嘘や約束」の先が見えるようになってくるはずですから。ただ、叱られることに対して「強い怖れ」や「不安感」を持っている場合は、なかなかその癖(嘘をついたり、その場しのぎのことを言ったりする)から脱することができない場合があります。「とっさに口をついて出てしまう言葉(嘘やごまかし)」の背景には、そもそも「不安感」があるはずです。その「不安」が大きいお子様ほど、そういった「癖」から抜け出すのには時間がかかるのです。


まず保護者の皆様にご留意いただきたいことは、お子様に「安心感」を与えていただくことです。「悪いことをしても叱られない」という「安心」ではなく、「悪いことをしたら叱られるけれど、それでも自分を認めてくれるはずだ」という意識です。言い換えれば「人格的に認めてくれている」という「自己肯定感」につながる安心ともいえるでしょう。そのためには、まずお子様の気持ちを受け止めてあげることが大切だと思うのです。「子どもに嘘をつかせるのは大人の責任」という言葉を聞いたことがあります。「嘘をつく」という行為そのものは決して認めることができるものではありませんが、その背景にあるお子様の気持ちを理解し、受け止めてあげることも必要だと考えています。

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