四つ葉cafe 福田貴一 中学受験をお考えの小学生3・4年生のお子様をお持ちの保護者の方のためのブログ

『ドーナツの思い出』

2025.06.20

今年卒業した小学校6年生のなかに、私の「師匠」がいました。なんの「師匠」かというと、「ポケモン」こと「ポケットモンスター」です。


彼が小学3年生だったころ、ある授業のときに着ていたTシャツが「ピカチュウ」の柄でした。「おっ!ピカチュウだね。好きなの?」と声をかけたところ、彼は「うーん、ピカチュウよりも好きなポケモンは多い」と答えてくれました。それから、彼は毎回の授業のときにさまざまなポケモンのTシャツを着てきてくれて、いろいろと私に教えてくれました。「これはリザードン。タイプは『ほのお』と『ひこう』。ヒトカゲから進化するんだよ」というような会話がいつも交わされていました。「ピカチュウ」くらいしか知らなかった私も、彼のおかげでポケモンについてずいぶん詳しくなりました。


彼とポケモンについての会話をしようと、いくつか調べてみました。その結果、当時私が思っていた以上にポケモン人気が高いことも知りました。日本だけではなく、海外での人気も高いようで、海外からの観光客が増加しているここ数年、「ポケモンセンター」がとても混雑しているという話題もどこかで見ました。


調べてみたところ、アメリカでポケモンアニメ(英語版)が放映されたのは1998年からで、いまから27年も前でした。今でもポケモンのグッズ(筆箱や水筒など)を持ってきている小学生がいることを考えると、少し驚きです。


さて、その英語版アニメのなかに有名な場面があるのをご存じでしょうか。登場人物が「おにぎり」を食べている場面で、その「おにぎり」が「ジャム(Jelly)の入ったドーナツ」と表現されているのです。画面に映っているのは明らかに三角形のおにぎりなのに、「ドーナツ」……。これは当時のアメリカの子どもたちにとって、「おにぎり」が一般的ではなかったことから変更された表現だと聞きました。それから20年以上経っており、日本食がアメリカでもある程度理解されるようになっている現在では、アメリカでも「なぜ、おにぎりがドーナツになっているんだ」という話も持ち上がっているようです。個人的には「おにぎり」を「ドーナツ」と表現してしまうのは、違和感があります。せめて「ハンバーガー」や「サンドイッチ」なら、簡便な食事というイメージで納得もいくのですが。具として入っている「梅干し」や「昆布」を「ジャム」と言われてしまうと、ちょっと違和感もありますよね。


「ドーナツ」で思い出したことがもう一つ。「ドレミのうた」の話です。
映画・ミュージカルで有名な「サウンド・オブ・ミュージック」のなかの曲なのは、ご存知の方も多いでしょう。私は映画で見た記憶があります。緑の丘の上で主人公の女性(ジュリー・アンドリュース)が子どもたちと歌っている場面を覚えています。ただ実は、英語がきちんと聞き取れていなかったこともあって、英語の歌詞でも「ドはドーナツのド、レはレモンのレ……」という意味で歌っているのだとずっと思っていました。アメリカの歌なので「ド」が「ドーナツ」なのは自然です。でもよく考えてみると、「ミはみんなのミ」「シはしあわせ」あたりになってくると日本語になっているわけです。


もともと「ドレミファソラシド」はイタリア式の音名です。英米式ではドレミの順に「CDEFGAB」という音名がつけられています。ギターを弾いたことがある方は、「コード」という概念で英米式になじみがあるかもしれません。「ドレミのうた」では、このイタリア式の音名を英語の「音」に合わせて歌われています。
「ド」は「doe(雌鹿)」、
「レ」は「ray(光線)」、
「ミ」は「me(私)」、
「ファ」は「far(遠く)」、
「ソ」は「sew(縫う)」、
「シ」は「tea(お茶)」
と歌われています。「ドレミ……」という音名に似た音を持っている英単語(1語)で表しているわけです。面白いのは「ラ」にあたる英単語がなかったのでしょう、「ソの次の音」という歌詞になっています。ご興味のある方は、英語の歌詞をご覧になってみてください。


さて、日本語歌詞ではご存知の通り「ドーナツ」「レモン」「みんな」「ファイト」「(青い)空」「ラッパ」「しあわせ」という言葉が使われています。英語と違うのは、その音で表される1語ではなく、その音から始まる単語で表しているという点です。ここにも英語と日本語の違いが見えるような気がします。


後に、この日本語詞をつくられたのは、歌手として有名なペギー葉山さんだということを知りました。ドーナツは、「お母さんがつくってくれたドーナツのイメージ」で作詞されたというのを読んで、私も思い出しました。今では「ドーナツ屋さん」で買うイメージが強いドーナツですが、昭和の時代は、家でお母さんがおやつにつくってくれる素朴なお菓子でした。


ある日、私が小学校から帰ってくると、母が台所でドーナツをつくっていました。二人の弟たちは揚げたてのドーナツに砂糖をまぶすお手伝いをしていて、私が帰宅したのに気が付いた母は「お兄さんも帰ってきたから、できたのを食べていいわよ」と私たちに声をかけてくれました。そこからの三兄弟の食欲はすさまじいものでした。私が真っ先に手を出すと、二番目の弟は両手にドーナツをとり、さらに三番目の弟は一つを口にくわえて両手に持ち……。母が最後のドーナツを揚げ終えて振り返ったときには、20個以上あった家族全員(父・母・祖父母)分のドーナツは、すべて兄弟の胃の中に収まっていました。
母が懐かしそうに話していた昔話の一つです。

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